「楽しめている。ライオンズ戦は出たい」。クレルモン・松島幸太朗の充実
マイペースで話す様子は以前のままだ。
しかし言葉の端々から、自信と周囲との良好な関係、充実ぶりが感じられた。「楽しめています」と穏やかに笑った。
フランスの最高峰リーグ、トップ14のASMクレルモン・オーヴェルニュ(以下、クレルモン)でプレーする松島幸太朗の日本メディア向けオンライン会見が11月3日におこなわれた。
直近の3試合に先発でフル出場し、10月24日のポー戦では2トライを挙げてリーグの週間MVPに選出された。
10月31日のブリーブ戦では好走からのオフロードパスで仲間のトライを呼ぶ。チームへの貢献度が高いプレーを見せている。
シーズン当初のFBからポジションをWTBに変えてプレーをしている松島は、「あまり違う感覚はない」としながらも、指示の出し方を変えている。
「WTBはフィニッシュすることも重要だし、キックするスペースをSOにアイコンタクトで伝えることも必要。FBのときは、いろんなスペースを見てどこを攻めるか考えます」
周囲との連係が、より深まっていると話す。
強調したのは、チーム内でのコミュニケーションの質の高まりだ。合流直後こそフランス語の壁に不自由さも感じたが、英語での会話で互いを知り、ふざけあい、ちょっかいを出し、出されて、距離は縮まった。
その成果がプレーに反映されている。
「こちら(フランス)では、フィジカルなプレーから逃げない選手、気持ちを出す選手が好まれる」と話すように、求められているものを理解したのも大きい。
「積極的にボールを動かすことも多いのですが、予定していた攻撃オプションがダメなら、すぐに次のオプションを考え、実行する。みんな、その場で判断しながらプレーします」
現地の流儀に慣れ、伝達し合えるようになった。それが、安定した活躍の基盤となっている。
ふたたびコロナ禍が大きくなっているフランス。遠征時は試合当日のうちにホームに戻るようにスケジュールが組まれ、ロックダウンとなった街の状況に、行動は自宅とクラブハウス、練習場の間に限られた状況という。
そんな中でもプレーできていることに、「スポーツがあるから、みんな(国民)も頑張れているように感じています」と話す。
「テレビで観ている人たちにいい結果、いい試合を届けたいですね」
トップリーグでプレーしている時は、試合後、足に疲労が残ることが多かった。しかし、試合の強度が高くなったいま、試合後の感覚に変化が起きている。
「フィジカル的な強度が高いので、試合翌日、背中が筋肉痛になることも。上半身に疲労が残るようになりました」
相手によって、試合中のボールタッチの回数も大きく変わることもあるが、そんな状況にも落ち着いて対応する。
親交のあるボクサー、井上尚弥のラスベガスでの試合が先週末におこなわれた。
その一戦は自身初のアウェー戦だったブリーブとの試合を終えた後、明け方(深夜4時)に始まるものだったが、約3時間かけてクレルモンに戻ってきた後、そのままテレビで観戦したという。
「試合後で(昂っていて)眠れなかったので、そのまま起きていました。ノックアウトで勝ち、さすがだな、と。有言実行。刺激をもらいました」
来年6月26日、日本代表がブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズと対戦することにも触れ、「試合ができること自体、快挙」と話した。
クレルモンが好調を維持してトップ14のプレーオフに進出すれば、それらの試合とライオンズ戦はスケジュールが密になる。しかし、「特別な試合。少しでも試合日程がずれていれば、どんなに疲れていても出たい」と意欲を見せた。