【コラム】水色の結束
筑波のラグビー部には寮がない。他の強豪のように練習後に栄養価の高い食事が用意されているわけではないし、自立は培われても結束を生み出すのが難しい環境にある。コロナ禍の今季は大学のシャワー室が使えなくなり、練習後のリカバリーには特に苦労した。そんな状況だから、岡崎はなおさら積極的に下級生に声をかけたという。外出自粛期間が明けると、食事や銭湯にも誘った。9月、2年生で同じバックスの児玉悠一朗に聞いてみた。
「チームの雰囲気、どう?」
「下級生はやりやすいですよ。意見を言いやすい雰囲気があって」
後輩のさりげない答えが、岡崎にはうれしかった。
明大戦では、元気者の2年生フッカー肥田晃季が、声でプレーで、チームを励ました。フル出場の2年生WTB植村陽彦は、最後のチャージまで俊足を飛ばした。今季から先発をつかんだ3年生のSH鈴村淳史は自分から意見を出せるようになってきた。岡崎は言う。「下級生がチームを引っ張るのはすごくいいこと。僕らの代で、そういう雰囲気を作ることができた。筑波としてすごく成長できていると思う」
勝ち負けを超えて、人の心を震わせる。そんな場面がいつだって見られるわけではない。明治相手に最後まで勝ちにこだわったチームが、勝てないという結果が見えてもなお、チームの芯をぶらさず戦い抜く。しかも、主将や監督に言われたからではなく、リザーブの選手や下級生が自主的に戦い抜く姿勢を体現した。最後の1秒まで「HARD」であり続けようとした。筑波の地で積み重ねてきた時間が、あの瞬間にあふれ出た。
「全員がリーダーのチームでありたい。自立の部分では例年以上に『HARD』であろうと言ってきました。そういう意味では、ラグビー以外の部分で、チームとしてのまとまりを見せることができたと思う」。岡崎は誇る。
責任感にあふれる主将の想像を超えて、チームのアイデンティティを理解し、表現する選手たちが今の筑波にはいる。中盤戦へ突入する2020年の大学ラグビー。彼らはもっと、強くなれる。