その他 2020.10.23

中村亮土、日本代表が8強以上へ行くには「選手層」が鍵。W杯王者マルコム・マークスと対談。

[ 向 風見也 ]
中村亮土、日本代表が8強以上へ行くには「選手層」が鍵。W杯王者マルコム・マークスと対談。
上段左からマルコム・マークス、山田章仁。下が中村亮土


 ラグビーワールドカップ2019日本大会の準々決勝でぶつかった日本代表の中村亮土、南アフリカ代表のマルコム・マークスが、10月20日、三菱地所が動かす「丸の内15丁目PROJECT.」のオンライントークイベント『オンライントークラグビー世界大会2020~ONE TEAM FES』で対談。激戦を振り返った。

「素晴らしいチーム。観ていて応援したくなるチームだったので、潔く負けを認められましたね」

 こう語るのは中村。この大会で初の8強入りした日本代表は1年前の10月20日、3-26で敗れている。結局、南アフリカ代表は通算3度目の優勝を飾る。

 かたやマークスは、日本代表の印象を「日本代表との試合はタフになるとわかっていた。魅力的なラグビーをしますから」。世は空前のラグビーブーム。この日の観客数は48,831人にのぼった。準々決勝のスタジアムの雰囲気を、マークスはこう振り返った。

「我々の試合にも、日本のサポーターがたくさん来ていました」

 前半を3-5と競った。日本代表は両コーナーにキックを散らすなどし、相手の強力な一枚岩を崩しにかかった。かたや南アフリカ代表も日本代表のしぶとさを前にミスを重ねる。

 HOのマークスは、前半36分に登場し「計画通りにいかないこともありましたし、ミスもありました。ただ、そのミスにどう適応するかです。ミスを忘れ、切り替え、次の仕事に行く。それを意識していました」。かたやインサイドCTBとして先発の中村は、ハーフタイムにこう考えていたという。

「もっとボールを保持してアタックでプレッシャーをかけたいとは思っていました」

 もっとも、中盤以降は「そう(思うように)させてくれないのが南アフリカ代表の強さ。スクラム、セットピースでボールを保持してプレッシャーをかけられた」と中村。「一発の大きなタックル、前に出ること」で「空気を変えたい」と心がけたが、3-14のスコアで迎えた後半26分、決定打を放たれる。

 南アフリカ代表が自陣10メートルエリア右のラインアウトからモールを作ると、塊はあっという間にハーフウェイライン、敵陣10メートル線、さらには同22メートル線を越えてゆく。

 ここで最後列から飛び出したのはマークス。近くにいた中村は止めに入るが、「オフロードでつながれてしまって」。大会屈指のSH、ファフ・デクラークがフィニッシュし、直後のゴールキック成功で3-21と勝利を手繰り寄せた。

 中村は、日本代表が8強へ進んだ意義や今後の課題についてこう述べた。

「(日本代表は)身体が小さく、フィジカルな競技だと世界で戦うのが厳しいと言われているなかで、世界のベスト8に立てたというのは、日本のスポーツ界にいいメッセージが示せたと思います。ラグビー界ももちろん希望を持てたし、他の競技へもいい意味で希望を与えられた。ただ、それ以上、上へ行くにはもっと努力しないと厳しいものがあるし、このベスト8を継続するのも簡単じゃないと思いました」

「誰が出ても同じレベルで戦える選手層が必要で。疲れをうまく分散させられるようなチーム作りをしていかないと、最後まで戦い抜くのは限界があると感じます。(固定されたメンバーと)違う選手が出ても組織としてのバランスが保たれるようなチーム力が大事」

 イベントではワールドカップ2015イングランド大会で日本代表だった山田章仁がMCを務め、ファンの質問を募る形で進行。大会のMVPについて話題が及ぶと、中村は「デクラーク。そこは外せない」と即答し、マークスは「僕にとってのMVPは(チェズリン・)コルビです」と自国の小柄なエースの名を挙げた。

 両者は現在、それぞれサントリーの新主将、クボタの新加入選手として2021年の国内トップリーグを見据えている。

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