コラム 2020.10.16

【ラグリパWest】最後の秋にかける。庄司拓馬 [立命館大学主将]

[ 鎮 勝也 ]
【ラグリパWest】最後の秋にかける。庄司拓馬 [立命館大学主将]
今年の立命大を引っ張るNO8の庄司拓馬主将。コロナの感染を避けるため、半年以上、自宅に帰っていない。


 ずーっと家に帰っていない。
 もう、半年以上になる。
「3月末か、4月頭くらいですかね。最後は。よく覚えていません」
 立命大の主将はラグビーにかける。
 庄司拓馬は4年生NO8。ラストの秋シーズンに臨む気持ちは熱を放つ。

 キャンパスと下宿は滋賀の草津。実家は大阪の枚方(ひらかた)。電車を乗り継いでも1時間ほどあれば着く。
 そうしないのはコロナ対策だ。
「電車、買い物、食事など、外に出れば、感染する可能性があります。僕が一番しっかりしないと周りの人はついてきません」

 マスクを常に着用して、手洗い、うがい。アルコール消毒液も持ち歩く。移動は原付。部が提供するアスリート食がない時は、最も近いスーパーで買い物をし、調理する。
「得意なのはトンテキです。醤油、砂糖、みりんなどで味付けをします」
 自炊は上手くなっても、母・文子(あやこ)さんのできたての手料理を思い浮かべる。
「鶏のから揚げが特に好きです。ニンニクとショウガが効いています」
 好物はシーズンが終わるまでおあずけだ。

 立命大は今夏、関西Aリーグ8校の中で唯一、合宿を実施した。
 8月、長野・菅平で2回に分けて、計2週間を過ごす。朝日大と関東学大と試合が組める。朝日大には66−10で勝利。関東学大とは20分×4本のメンバー総入れ替え。この難しい時期に、実戦勘が養われる。
 その裏側には、庄司と創部92年目で初の女性主務になった奥英理乃を中心にした学生たちから、大学への働きかけがあった。

 庄司は振り返る。
「今やっている対策は、みんなで話し合って決めたことです」
 感染防止のガイドラインは奥を中心に練り上げる。それをアスレチックトレーナーの松本秀樹が目を通す。学生部の部長にはオンラインで合宿の重要性を訴える。

 学生たちが作り上げ、数度の出し直しを経たガイドラインに学校当局はOKを出す。
 A4版3ページの中には、宿舎の部屋の広さや送迎バスの座席数に合わせた具体的な人数までもが示してあった。
 現在まで、ラグビー部のコロナ感染者は0である。

 監督の中林正一は感謝がある。
「ウチの大学は課外活動に理解があります。ただし、一律ではありません。合宿ができたのは、学生たちが大学側とやり取りをして、納得させてくれた結果です」
 アメフトやサッカーなど、学内の強化指定7クラブの中で、合宿の許可が下りたのは、ラグビーだけだった。

 その部内の意思統一を容易にさせたのは「コアグループ」の存在だ。学生首脳の集まりで、庄司が提唱して、今年できた。
「去年の課題としてチームとしての一体感があまり感じられませんでした。下の学年を引き込めていない、と思ったので、彼らも一緒に考える仕組みを作りました」
 庄司と副将の2人、HO島田久満、SH松本涼志に3年生と2年生を3人ずつ加えた10人で構成されている。

 練習前後に行う短いミーティングを中心にして、チームの方向性を決めて行く。
「僕たちの言うことがコアを通じて下に浸透しているのを感じます。上下関係は保ちながら、なんでも言い合える仲になっています」
 その仕組みが、円滑で早いガイドライン作りなどを後押しした。

 庄司が楕円球を持ったのは中学から。枚方の楠葉(くずは)から東海大仰星に進んだ。
 当たり合いに優れたクレバーなLOとして3年時には冬の全国準優勝に貢献する。96回大会(16年度)の決勝戦は21−28と東福岡にトライとゴールで及ばなかった。

 この代は関東と関西のトップ24校中、5校で主将を任されている。
 京産大の田中利輝(LO)、東海大の吉田大亮(NO8)、法大の根塚洸雅(CTB=共同)、立大の北山翔大(SH)である。
「仰星はリーダーシップがある子が集まっていました。だから不思議とは思いません」
 次に続くのは東福岡の2だ。明大の箸本龍雅(LO)と法大の吉永純也(FL)である。

「仰星の同期がキャプテンをやっているチームとやり合えるのは、励みになるし、負けんとこうと思います。楽しくもあります」
 関東にいる同期主将と戦うには、大学選手権出場がマストになる。

 立命大は昨年、関西リーグ6位。2勝5敗で大学選手権に出場できなかった。
 庄司は1年から公式戦に出場も、2年連続して選手権で初戦負けをしている。関西2位で臨んだ2年時は明大に19−50、同3位での1年時は慶大に12−101だった。

 最終学年で迎える57回目の選手権。その出場権をつかむには関西で3位までに入らないといけない。細い目は光る。
「優勝して、選手権に挑みたいです」
 コロナでの個人練習の間、ベンチプレスとスクワットは上限をともに20伸ばし、175と220キロにした。サイズは181センチ、100キロ。準備は万端だ。

 チーム運営を司る高見澤篤GMは言う。
「今年のキャプテンやマネージャーを見ていると、芯から勝たせてあげたくなります。こんなことを私が言うのもおかしいのですが…」
 交流試合の初戦は京産大。率いるのは田中。10月17日、正午に鶴見緑地で開始される。
 勝敗は成績に反映されないとはいえ、スムーズな滑り出しのためにも、負けられない。


PICK UP