サンウルブズでも幅広げた。流経大のイノケ・ブルア、今季初陣への課題は。
自分の身体と自分のプレーを理解している。流経大ラグビー部のイノケ・ブルアは、ある動作を欠かさない。
足を前後に開く。後ろ足の膝を曲げ、伸ばした前足にぐっと体重をかける。これを左右、交互に繰り返す。
練習が本格化する前におこなうボール回しの合間にも、このアクションを意図的におこなう。
「大事。いっぱい走るから、もし、それをやっていなかったらけがのリスクが高くなる」
来日3年目のフィジー人留学生。大きなストライド、変幻自在のフットワークを持ち味とする。得意なプレーの披露が故障につながらぬよう、特に下半身に入念なケアを施す。
10月11日、加盟する関東大学リーグ戦1部の専大戦がある。茨城県内の流経大グラウンドでの無観客マッチだ。
コロナ禍に伴い、開幕前の実戦機会は例年より少ない。特異なシーズンの渦中、内山達二監督は「少ないゲームのなか、大学選手権に向けて選手層を厚くする。勢いのあるメンバーを出す」。昨季リーグ戦3位となったことで出場した大学選手権を見据え、少しでも多くの選手へ出番を与えたいようだ。
韋駄天のブルアは、専大戦で今季初先発を飾る。アウトサイドCTBに入る。
「(以後は)全部の試合、けがなしで出る。それが一番!」
身長177センチ、体重90キロ。スバ・グラマースクールを経て流経大入り。2年目の昨季は12月15日、埼玉・熊谷ラグビー場での大学選手権の3回戦で過去9度日本一の帝京大と激突。2トライを決めて43-39で勝ち、シーズン終了後にはサンウルブズの練習生となった。
国際リーグのスーパーラグビーへ日本から挑むサンウルブズは、各国から選手を集める。
多国籍軍におけるプレー中の連携は簡単ではなかろうが、ブルアは「自分は日本語もわかっていたから、日本語と英語で(声をかけ合った)」。現キヤノン監督の沢木敬介コーチングコーディネーターからは、最後尾のFBでプレーできるよう動きながらキックを蹴ったり、防御をひきつけてパスを放ったりする動作を指導された。
「いっぱい、勉強しました。大学と全然違うレベル。雰囲気もよかった」
寮に戻ってからは、グラウンドやジムが使えなくとも自室でダンベルを動かす。指揮官によれば7月から本格的にギアを入れ始め、FLの坂本侑翼主将ら合計25名のリーダー陣が引っ張る形でモチベーションを高める。
練習後は必ず、主力組、控え組にわかれてレビューを実施。事前に掲げたその日のフォーカスポイントを遂行できたか、意見を交わす。
10月4日、流経大グラウンドでの法大との初戦を28-10で制したが、ミスの重なる内容に「(根本的な課題は)ポジショニング、ディシジョンメイキング」と坂本。これは自ずと、専大戦へのテーマとなった。
ブルアは右肩痛の影響で初戦を欠場。今回、遅れてやってきたオープニングゲームへ挑む格好だ。専大戦でのミッションを問われれば、「パッシング。ベーシックスキル。コミュニケーション。チームでのポジショニング…」。組織全体でやろうとすることを、個人としても実践したい。