コラム 2020.09.21

【ラグリパWest】廃墟?の中でごちそうざんまい『炉ばた ワコー/大阪・本町』

[ 編集部 ]
【ラグリパWest】廃墟?の中でごちそうざんまい『炉ばた ワコー/大阪・本町』
「炉ばた ワコー」の店長、ナガタクこと長澤拓哉さん。八尾南(現・八尾翠翔)高校出身のラグビーマンでもある。奥の壁に昨年のW杯のポスターが張り続けてある
見よ! 芸術的な美しさを放つ食材の数々。コの字型のカウンター8席の前にある冷蔵ボックスに並ぶ。肝心の料理の写真は美味しすぎて撮るのを忘れてしまいました。かんにんえ


 ぬぅわにー!?
 これは関アジやん。九州と四国の間、豊予海峡の辺りでしか獲れへんやつや。
 この刺身、脂が乗って、ピチピチ。噛んだら、溶けていくー。ああ、しあわせー。

「関サバも含めて、大阪のこのレベルの店で食べれんのはウチだけやと思います」
 長澤拓哉はんは胸を張る。大阪・本町にある「炉ばた ワコー」の店長や。

 日本酒は紀州の「日本城」(にほんじょう)。切れのある中辛。すっーと入る。
「大阪でまともにこのお酒が飲めるのはウチだけやと思います」
 こっちもかいっ! 逸品ぞろいやね。

 長いしゃもじで供される基本の焼きもんも刺身に負けてへん。
 サザエはバター醤油。肝の苦みもバターでまろやか。牛はハラミやホルモン、豚はステーキ、鶏肉でチーズと明太子と大葉を巻いた「ささみトリネード」なんて創作もある。

 焼きおにぎりは十五穀米を使用。体によし。自家製の梅肉が乗ってある。三角やなく、ハートマークで出てきた。
「僕からの気持ちです」。
 そんな心遣い、男同士でいらんわー。

 ただ、場所がね…。
 初めての人はびっくりするやろな。お商売の街・大阪のど真ん中やのに、廃墟か、はたまたお化け屋敷か…。
 店以外はシャッターのみ。暗い路地の奥にワイン樽ほどの巨大な特注の赤提灯が見える。夕方6時、明かりが灯れば、ほっ。

「僕、座敷わらしがいると思うんですわ」
 店長、その妖怪、おるんやったら、幸運が訪れるやん。でも、ここ大阪やで。「赤べこ軍団」の黒沢尻工のある岩手やないんやけど…。

 店長の体つきはラグビーボール。PRの現役時代は157センチ、70キロ。今は美味しいもんつまみ食いするんで、見たところ3ケタやな。コンパでキムタクが来るはずが、「ナガタク」が現れ、場は大荒れや。

 ナガタクが競技を始めたのは高校入学後。八尾南(現・八尾翠翔=やおすいしょう)でやね。今も路地の天井には黄緑と深緑の段柄ジャージーがぶら下がっている。

 近隣校の八尾でトイメンやったのは萩井好次はんや。同大からワールドに進んだ同級生は当時から強かった。
「へちへちにいかれて、やられました」
 萩井はんは「仰星のおっかけ」の谷山榮一はんの導きでここに来た。監督として同大、関学の2大学の指導中も含め、会社が近いこともあって、よく飲んでる。

 萩井はん、店長って、どんな感じ?
「最高の男ですよ」
 どこが?
「まず、スクラムが低くて、低くて、低い」
 そこかいっ! 普通は気性やろ。

 店長は高校卒業後、魚市場で働いた。その時の縁で、海鮮は三坂英明はんがチョイスしてくれる。木津市場の名仲買人。せやから関アジなんかの高級品も安価でいただける。

 1996年、22歳の時、店長は父・義弘はんが始めたこのお店を再興した。
 親の事業を息子が継ぐ。ええ話やー。
 その時、料理を学ぶために長居の和食店に半年ほどつとめた。
「余剰人員なので、店の掃除ばっかりしていました」
 それ、修行になってないやん…。

 父は半世紀以上前に、ここで新規開店した。周囲は「糸へん」のお店ばかりやった。
「生地屋やったのを、おもんない、と言って飲食業を始めました」
 今では3店舗分使い、二階もある。

 店長とラグビーの関係は続いている。
 阿倍野(あべの)ラグビースクールと大阪狭山スポーツクラブで指導員をしている。
 阿倍野のつながりで黒毛和牛はええのが届く。魚と並んで無敵やわ。

 店長はラグビーのよさを語るで。
「達成感や高揚感やと思います。ほかのスポーツと違って、けんか同然にやる。そのテンションでやるスポーツはありません」
 だから仲間意識は途切れない。八尾南の同期11人とは最低年に1回は集まっている。

 コロナの自粛期間は当局の要請に従って開店時間を11〜20時に変えた。売り上げはいつもの3割ほどに落ち込んだ。
「その時にラグビー仲間が来てくれました。同級生、阿倍野のコーチ、ここで知り合った人たち。本当に助かりました」
 客足が戻った今は満席。路地にもテーブルを出すで。店内は「いらっしゃーい」、「はいよー」って活気があふれている。

 料理50種、飲み物25種ほどあるが、メニューには値段が書いていない。だからといってびびることなかれ。飲み食いして一人3000〜5000円。やすっ。お料理のみならお任せの定額コースも2000円からある。
 ぼったくらんから、どうかご安心を。行くなら、予約を入れた方が確実でんな。

◆炉ばた ワコー◆
■住所 〒541−0054 大阪市中央区南本町3−4−9 本町センター街内
■電話 06−6252−2757
■営業時間 18時〜深夜2時(新地やミナミの夜の蝶とのアフターもバッチグー)
■定休日 土曜、日曜、祝日(貸し切り予約のみ開店、6人から、要相談)
■座席 40席(カウンター8、テーブル32)
■予約 可能(最大2人までの人気のカウンター席は不可。開店前に並びませう)
■最寄り駅 大阪メトロの本町。7番出口から徒歩2分


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