国内 2020.08.08

コロナ禍にパワーアップの片倉康瑛、明大ラストイヤーに「やる時はやらなきゃ」。

[ 向 風見也 ]
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コロナ禍にパワーアップの片倉康瑛、明大ラストイヤーに「やる時はやらなきゃ」。
8月7日、取材に応じる明治大学の片倉康瑛(撮影:松本かおり)


 新型コロナウイルスの感染拡大の影響でチームが一時解散した4月以降、明大ラグビー部4年の片倉康瑛は体重を1キロばかり増やした。もっともその身体つきには、数字以上のたくましさを宿す。

 7月中旬までの自主練習期間にウェイトトレーニングへより注力し、大胸筋などを鍛えるベンチプレス、足腰を強くするスクワットでの最大重量をそれぞれ「10キロ」ずつ更新した。

 公式で「身長191センチ、体重101キロ」のLOは表情を崩す。

「体脂肪を意識せず体重を増やすことに専念してきたんですが、筋トレがうまくいったことで体脂肪率もうまく落ちた感じです。ウェイトの数値は、他にもっとすごい人がいるので。自分はベンチプレスで(最大)150キロくらいですが、(同期の)三好優作は180キロ! …コロナの期間中にどう過ごすかが大事だと思っていて、自分はまだまだ細いので身体作りに力を入れて、チームはその時に必要だった基礎、フィットネスを重点的にやっていました」

 明大中野高3年時は全国大会に出場。部内では内部進学先で体育会へ進む同級生が少なかったなか、CTBの亀丸傑、FBの小島昂とともに八幡山のラグビー部寮へ住み込んだ。2年時は先発に定着して大学日本一に喜び、2019年3月には有望な若手の集うジュニア・ジャパンの一員として「ワールドラグビー パシフィック・チャレンジ」に出場した。

 今季はチームで副将となった。「皆に任せてもらえたからにはやりたいと思いましたが…。正直、個人的には自分はリーダーという感じではないと思う。人として成長しなきゃ」と、チームを引っ張る思いや責任感を言語化するのに苦しむ様子。「こういうのを言葉にするのは苦手で…」。もっとも、昨年からリーダーシップを発揮してきた領域がある。

 タッチライン際の空中戦、ラインアウトだ。長身LOにとって見せ場となるラインアウトにおいて、片倉は相手の隊列を分析したり、適宜最適な捕球位置を決めたりと知恵を絞ってきた。

 最上級生として迎えた自主練習期間中も、学生コーチの福家祥太郎と話し合ってそのクオリティを高めた。

「ラインアウトを考えるの、楽しいです。コーチが介入できないなか去年と同じようなメニューをしていたのですが、全然、うまくいかない。ジャンプとリフト(基本の跳躍と支え)の精度が悪い。いままでそこは個人でやるようにしていたんですが、(消化不良だったのを受けて)福家と相談して、ジャンプでまっすぐ足を閉じて飛ぶ動き、リフトの『投げる』(ジャンプする選手に見立てたタックルバックを、正しいフォームで上空へまっすぐ放る)という動きのメニューを練習に採り入れました。すると皆、うまくなった。こうするとラインアウトはよくなるんだ…という発見がありました」

 身体を強くして空中戦の基本を見直した片倉は、卒業後、2022年発足予定の新リーグに加わるチームで腕を磨く予定。ただしいま集中するのは、学生ラストイヤーの充実化だ。

 明大の加盟する関東大学対抗戦Aは10月に開幕見込みで、年末の大学選手権開催へも議論が進んでいる。

 片倉は昨季、対抗戦で勝った早大に大学選手権決勝で敗戦。2連覇を逃している。悔しさを晴らしたい。

「去年は先を見過ぎていたところもあった。対抗戦でも大差の試合が多く、周りからも最強と言われ、勝てるじゃないか、と、慢心という部分もあった。今年は対抗戦で大勝し続けて1位になっても、試合に出ていた僕らは去年の反省点を伝えられる。目の前の一つひとつの準備をしていく」

 8月9日には22歳となる。もっと大きくなるつもりだ。副将としての決意を聞かれていた間には、こんなフレーズも残していた。

「(皆の)手本になれるように。やる時はやらなきゃいけない」

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