国内 2020.07.21

W杯日本代表・山中亮平は、凸凹な道も突っ走る。

[ 向 風見也 ]
W杯日本代表・山中亮平は、凸凹な道も突っ走る。
ワールドカップ2019開幕戦・ロシア戦で後半から出場し勝利に貢献した山中亮平(Photo: Getty Images)


 足場が悪い。それがいい。山中亮平はこの春、山や海へ出かけていた。

 凸凹な道を上ったり、走ったりして全身に満遍なく負荷をかけるためだ。試合中に疲れにくくなるための「ベースづくり」だ。「まだラグビーをやっていなから(その効果が)どうなっているかはあまりわからない」としながら、こう続ける。

「結構、いいトレーニングになります。ですが、山登りも砂浜を走るのも最初はめちゃくちゃしんどかったんですけど、ずっとやっているうちに楽に登れたり、走りやすくなったりしてきた。うまく身体を使えるようにはなってきているかもしれないです」

 身長188センチ、体重98キロ。東海大仰星高時代から大型司令塔として将来を嘱望され、早大時代に初の日本代表入りを果たした。

 昨年は31歳にしてワールドカップ日本大会に初出場。最後尾のFBとして全5試合に出場し、ロングキックや思い切りのよいカウンターアタックで光った。

 今年1月からの国内トップリーグでも、前年度王者の神戸製鋼の一員として開幕6連勝。新型コロナウイルスの感染拡大などのためにシーズンは不成立となり、「試合ができないことは残念。優勝に向けていい準備もできていましたし、自分のなかでもいい感じでこられていたんで」。しかし「こういう状態なんで仕方ない」とも続け、海や山に足を運んだのだ。

 関係者の話を総合すると、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチの続投を決めている現日本代表は、水面下で約50名の代表スコッドを編成。ストレングス部門のコーチからトレーニングメニューを授かり、週に1度のペースでオンラインミーティングを開く。

 山中もその一員の見込みで、今年6~7月のテストマッチが秋以降にあると信じて鍛錬に励む。夏に対戦する予定だったイングランド代表を率いるのはエディー・ジョーンズ。2015年のワールドカップでは日本代表のヘッドコーチを務め、山中を大会前の最終選考合宿まで帯同させていた。

 ジョセフの日本代表とジョーンズのイングランド代表は2018年秋にトゥイッケナムで戦い、35-15でイングランド代表が勝っている。山中はこうだ。

「2018年のトゥイッケナムでは試合に出られなかった。(今度は出場メンバーとして)やりたいですね」

 グラウンド外では、自身の知名度を生かして競技の普及活動に注力している。『OFF THE FIELD』という取り組みでは、男性向けのアパレルアイテムを1つ売るごとに小型のラグビーボールを1つ制作。各地の幼稚園、保育園などに配る。趣味のファッションでビジネスを展開すると同時に、競技人口増加と別な領域で普及活動をしているのだ。

「(2015ワールドカップの歴史的3勝に伴う)ブームが去ったら人気が落ちついていったって感じですけど、いまはラグビーがなくなってもラグビーロスの方がたくさんいると思う。いまはプレーできないですけど、(ファンに)いろんな形で楽しんでもらえるように考えていきたい。(コロナ禍収束後は)日本代表、トップリーグで活躍できるようにしたい」

 以前は2019日本大会を最後のワールドカップにすると決意を固めていたが、現在は普及活動でモチベーションを高めたことにより1日でも長く「トップ」でプレーしたいと考える。自然の凸凹な道へ足を踏み入れたのも、そのためだ。

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