ワールドカップ 2020.06.26
ラグマガ推薦!もう一度見たいW杯名勝負<前編> 「現在のジャパンの礎となった2試合」

ラグマガ推薦!もう一度見たいW杯名勝負<前編> 「現在のジャパンの礎となった2試合」

2019年ラグビーワールドカップ日本大会。ジャパンの大躍進に日本中が空前絶後の歓喜に沸いた。多くの人がラグビーに関心を持ったことだろう。せっかく盛り上がったラグビー熱がコロナ禍で縮小気味のいま、その熱を一過性のものにしたくはない。現在、ラグビーワールドカップの過去9大会の名勝負を放送しているWOWOWとのコラボで、ラグマガ編集部が多くのラグビーファンに「もう一度見てほしい試合」を振り返る企画の前編。まず、ジャパンの大きな転機となった「1991年ジンバブエ戦」「2003年フランス戦」を推す。

[ 田村一博 ]
強豪フランス相手に真っ向勝負を挑んだジャパン。キックで得点を重ねる中、後半に大畑大介もトライで意地を見せた(Photo: Getty Images)

RWC2003年 フランス戦
「我ら、ブレイブ・ブロッサムズ」

 初戦のスコットランド戦で日本代表は、一人ひとりが低く、激しいタックルを連発し、前半を6-15で終える。後半15分にサインプレーからWTB小野澤宏時がトライを奪った時には11-15のスコアとなった。

 その後差を開かれて11-32と敗れるも、その試合内容に、当時ジャパンタイムズ紙の記者だったリッチ・フリーマン記者はウェブサイトに日本代表のことをブレイブ・ブロッサムズと表現した。翌朝の地元紙にも同様の見出しが躍った。

 日本のファンにとっては、誇らしいニックネームがつけられた試合と記憶される、そのスコットランド戦。しかし、「勝ちにいって負けた。悔しさばかりが残っています」と記憶しているのが当時の日本代表指揮官、向井昭吾監督だった。

 同監督は、スコットランド戦前日の深夜、全選手一人ひとりに書いた手紙を、それぞれのホテルの部屋に差し込んだ。大会への準備過程では不安定な足取りだったチームは、ひとつにまとまっていた。

 善戦なんていらない。

 チーム全体のそんな意志が強く出たのが、次戦のフランス戦だった。

 スコットランド戦から先発を8人代えて臨んだ。

 温存ではない。日本代表は前年、この大会の4試合中3試合を戦ったタウンズビルを含む豪州各地で、ワールドカップの日程にならったスケジュールで試合をおこなっていた。

 向井監督が「全部勝つ」つもりの選手起用を実行した結果、スコットランド戦の先発から外れた選手は「俺たちはもっと戦いたい」となり、フランス戦でチャンスをつかんだ選手たちは「やってやるぞ」と奮い立った。その両方の感情がチームを前に進ませた。

 このフランス戦、結果は29-51。最終的には離されるも、多くの人を熱狂させる試合だった。

 2G5PGと、すべてのプレースキックを決める活躍だったFB栗原徹は、いまも当時の興奮を覚えている。

「地元の人たちがジャパンをすごく応援してくれた。これがワールドカップかと感じました。高揚感を感じながらプレーしました。夜の試合で、実際とは違うかもしれませんが、ピッチから観客席がハッキリとは見えなかったように記憶されています。ピッチだけが照らされ、浮かび上がっている中でプレーしているような、不思議な感覚だった」

 SOアンディー・ミラーと廣瀬佳司、そして栗原。チームには3人のキッカーがいた。この試合に出場したのはミラーと栗原。「距離があるものはミラーの方が入る。そういう役割分担でしたが、チームというより、自分たちで話し合って決めていました」(栗原)。

 多くのPG機会があった。それを確実に決めて得点を重ね、競る展開を長く続けることは、試合前から決めていた。

 相手に多く反則をさせたのは、向井監督が「最高のバックローだった」と評価する大久保直弥、箕内拓郎、伊藤剛臣の3人をはじめ、全員が体を張り続けたのが理由だ。栗原も最後尾から前線の踏ん張りを見て、「ファーストタックルの精度が高かった」と話す。

 奪ったトライは2つ。

 前半31分にラックからフラットなパスをSOミラー、12番・難波英樹、13番・ジョージ・コニアと繋ぎ、タテに切れ込んだコニアがインゴールに入った。

 後半29分に奪ったWTB大畑大介のトライはイーブンボールの確保から鋭く攻め、最後はボールを大きく散らす。青いジャージの防御を完全に崩した。

 しかしそれでも、前回大会(1999年)準優勝チームの壁は厚かった。

 栗原が試合前のことを思い出す。

「ピッチに入る時、(SOのフレデリック)ミシャラクと並びました。細いな、と感じたんです」

 しかし、その男はやはりワールドクラスだった。

「試合が始まればサポートプレーが凄かった。オフロードパスへ入るタイミング、コース、それが絶妙で。ハードタックルしても、そこで突破された。フランスがただ当たってくるだけのチームなら、もっと勝負できたと思います」

 向井監督は、そのときにチームが持っているものは出せたが、もうひと段階タフに戦えないとダメだとあらためて感じた。

「代表チームを鍛える。私はそうやってチームを作ってきました。それまでのジャパンより、もっともっと練習をしないと(世界では)勝てないぞ、と。でも、それでも足りなかった。あのワールドカップはそこと、日本らしさを磨くことの重要性をあらためて教えてくれたと思います」

振り返ってみれば、1991年のワールドカップと2003年の勇敢なる戦いは、2015年以降の日本代表躍進の礎になっているとあらためて気づく。




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・2015年⼤会 ニュージーランドvsオーストラリア 7⽉25⽇(土)午前10:30[WOWOWライブ]

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