国内 2020.05.22
筑紫高ラグビー部は、春にも冬にも花を咲かせる。「いまは差を埋められるチャンス」

筑紫高ラグビー部は、春にも冬にも花を咲かせる。「いまは差を埋められるチャンス」

[ 向 風見也 ]
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筑紫高校の藤木佳行ヘッドコーチ

 ラグビーの指導に魅了されたのは19歳の頃。下宿先に近かった名古屋高でコーチを始め、教えること、感動を共有することに喜びを感じた。その思いは大学卒業時により強め、働きながら通信教育で教員免許を取った。2011年の春、地元に戻って現職に就いた。

 当時のチームには、自身も教えを請うたカリスマ指揮官がいた。

 現・筑紫丘高副校長の西村寛久は、1994年から2013年度まで筑紫高の監督を務めた熱血指導者。服装の乱れもつぶさに指摘し、試合前には選手を集め「筑紫やぞ!」と叱咤する。2015年は総監督として、24年ぶり5回目の全国大会出場を決めている。

「100のうち99厳しいけど、残りの1の優しさで99が消えちゃう」

 学生時代に出会った西村の印象についてこう語る藤木。着任当初は「西村先生の作ってきたものを壊さずに続けていくことでいっぱいいっぱい」だったというが、時間を重ねるほどにあることに気づいた。

「(西村の指導法は)西村先生の、あのカリスマ性があったからできることだった。(自身が西村と)同じことを言っても、生徒への伝わり方が違った」

 そういえばコーチとして触れた総監督の西村は、選手への鋭い洞察力をもとに気を引き締めるタイミングを繊細に見定めていたような。自分が現役時代から「心を見透かされるよう」な感触を抱いた裏には、西村にしか説明のできない無形のメソッドがあったのだろう。部員に帰属意識を思い起こさせる「筑紫やぞ!」も、独特の調子、声色があったからこそ成立するフレーズだったのだ……。

 そう感じた藤木はもう、憧れの西村の影を追うのはあえてやめている。自分らしく、いまの選手に合った運営を模索する。

 コーチング専門のスクールへ通い、ビジネスコーチングの関連資格を取得。「(部員が)卒業後、社会で貢献できるリーダーになれるか」を念頭に置き、イスラエル発祥のカードを使ったコーチングツール「Points of You」を使って選手の対話や意思表明を促す。

 特に最近では、引き締めるより自信をつけさせる方が重要と捉える。県内の実力者が全国大会常連の東福岡高に集まる傾向があるためか、筑紫高を選択するラグビーマンたちに「劣等感を持って、自信のない子」が多いと感じさせられるからだ。

 そのため藤木は、部員を6つのグループに分けることでリーダーシップを取る選手の頭数を増やした。要職を授けた部員には「置かれた立場で責任を持ってやろう」と促し、たとえ少人数であっても集団を束ねる経験を積ませた。

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