各国代表 2020.05.03

救急車の運転手になったイタリア代表の勇者、ムバンダ。コロナで厳しい医療現場をサポート。

[ 編集部 ]
救急車の運転手になったイタリア代表の勇者、ムバンダ。コロナで厳しい医療現場をサポート。
勇敢にタックルするマキシーム・ムバンダ。イタリア代表20キャップ(Photo: Getty Images)


 イタリア代表のバックローとして昨年のラグビーワールドカップ日本大会に出場したマキシーム・ムバンダはいま、救急車の運転手として忙しい日々を送っている。

 3月、シックスネーションズ(欧州6か国対抗戦)最終節のイングランド代表戦に向けて準備をしていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により試合は延期。大会は中断となり、チームは解散した。所属クラブのゼブレも活動中止となり、自分にできることは何か考えたという。

 当時、新型コロナウイルスをめぐる状況は、パンデミック(世界的大流行)の中心と呼ばれた欧州においてイタリアは最も深刻だった。

 外科医の父を持つ27歳のムバンダは、自分には医療の専門知識はないが、自分の地域社会を助けることをしたい思った。インターネットで検索したところ、ゼブレが拠点とするパルマで、自治体と協力して高齢者向けに医薬品や食品を届けたり、患者を運んだりする輸送サービスをおこなっている慈善事業があるのを見つけた。すぐにボランティアを志願。2日目からは、救急車両の運転手として、陽性の患者を地元の病院から別の病院へ移送するのを手伝うよう頼まれた。1日12時間または13時間シフトで始め、勤務中はほとんど休みがないという厳しい現場で医療システムをサポートしている。

 ワールドラグビーのインタビューでムバンダは、「初日は怖かった。それは目に見えない敵です」と新型コロナウイルスの恐ろしさを語っている。ストレッチャーを手伝ったり、車椅子で運ばれる患者もいて、接触するため、自分が感染しないように注意する必要がある。緊張する現場だ。それでも、この緊急事態が終わるまでは続けることを決めた。

「私はいま、健康です。健康である限り、できるだけ助け続けたいです。両親とガールフレンドがずっと同意してくれるなら、続けます。チームメイトやコーチングスタッフなどからは、どれほど誇りに思っているかというメッセージをたくさん受け取りました」(英国メディア『The Independent』より)

 5月2日時点で、イタリアでの新型コロナウイルス感染者数は20万9328人、死者数は2万8710人となっている。それでも、感染拡大のペースは3月初旬の水準まで減少しており、5月4日には封鎖措置の緩和を開始する予定だ。ムバンダのような名もなきヒーローたちのサポートも明るい兆しにつながったに違いない。

 ムバンダはこんなことを言っている。
「ラグビーの試合のように、私は自分の目標を思い浮かべます。この場合、トライを獲得することは、1人またはできるだけ多くの人を救うことを意味します。この“試合”の終わりができるだけ早くくることを願っています」(『World Rugby』より)

(情報参考:World Rugby, The Sun, The Independent)

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