【ラグリパWest】斎藤久53歳。ひとつに絞る。[三重パールズGM]
指導者育成に関しては、母校の大体大に卒業生2人を送った。PR山本大雅、SO前田翔太郎は新2年生。この春、主将だったNO8の小倉空は関東大学リーグ戦の覇者、東海大に進む。
「四日市工を全国大会に出させてやれなかった残念な気持ちは残るけどな」
それでもこれからは三重県ラグビー協会の強化委員長として心のままに行動できる。
パールズでは現場の最高責任者であると同時にチーム運営にも軸足を乗せる。
「新しいスポンサー探し、選手の獲得、コーチ陣の充実やな」
GM専任後のターゲットを口にする。
「専用のものがあればいいな」
日々の練習場所は四日市メリノール学院や市内の中央緑地公園。ウエイトトレはコスモ石油の施設などを借り、選手たちは個別に生活している。すべてが所有できれば、強化はさらに右肩上がりになる。
今年5年目に入るチームは、東京五輪の代表候補に伊藤優希を送り出し、2019年の15人制日本代表には主将の齊藤聖奈や玉井希絵ら5人が選ばれた。
昨年の太陽生命シリーズは総合成績で12チーム中3位に入っている。
ただ、今は新型コロナウィルスの感染拡大の影響で思い切った行動がとれない。
五輪は来年に延期され、太陽生命シリーズも5月の東京と静岡大会が中止になった。斎藤も選手勧誘などを自粛している。
「コロナがおさまってくれば、色々なことにチャレンジしたいと思っているよ」
家族は5人。妻の真紀は大体大の同級生だった。四日市西でラグビーを始めた斎藤は、FBとして長いキックなどを武器に関西代表(当時は日本代表の下)に選ばれる。真紀は器械体操部の主将だった。
卒業後、2人は三重の県教員になる。真紀は現在、杉の子特別支援学校に勤務。斎藤をラグビーに打ち込ませるため、体育系大学を出ているにも関わらず、勝ち負けが伴うクラブ活動の顧問につかなかった。
そして、不在の多い斎藤の代わりに3人娘を育て上げる。長女と次女は両親の背中を見て、小学校と高校の教員になった。
斎藤が故郷・三重に戻ってからのラグビーの歴史はすなわち、真紀の家事、育児、仕事における3連立の歴史でもある。
斎藤がパールズのGMとしてのみ生きることを決めた時、真紀は言った。
「楽しみなはれ。1回きりの人生です」。
その「内助の功」に報いたい。