東京五輪延期で悩む選手たち。全英ライオンズ南ア遠征は同時期開催、女子W杯に影響も。
イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの一流選手が集まって4年に一度結成される「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ」が、東京オリンピックで盛り上がる7月から8月にかけて南アフリカへ遠征し、ワールドカップ2019のチャンピオンである同国代表“スプリングボックス”などと試合をおこなうのだ。ツアーは7月3日のストーマーズ戦から始まり、南ア代表とのテストシリーズは7月24日が第1戦、同31日が第2戦、そして最終の第3戦が8月7日に予定されている。
しかし、ライオンズのマネージング・ディレクターであるベン・カルバリー氏はロイター通信に対し、「南アフリカと東京の時差を考えると、ライオンズの試合とオリンピックイベントがぶつかることはないはず」と語っており、心配していない。「私たちは世界チャンピオンに対して素晴らしいシリーズを期待している」と言う。
英国メディアの『Sportsmail』によると、テストマッチは3試合とも南ア時間午後6時(日本時間:翌日の午前1時)キックオフで調整が進んでいるとのこと。そうなれば、日本のファンも東京オリンピックとライオンズの南アツアーをどちらも楽しむことができそうだ。
だが、選手のなかには非常に難しい決断を迫られている者がいる。そのうちのひとりは、昨年のワールドカップで南ア代表の優勝に大きく貢献し、ワールドラグビーの年間最優秀選手賞にノミネートされたチェズリン・コルビだ。コルビは15人制の代表に選ばれる前に7人制の国際舞台で活躍し、前回の2016年リオオリンピックで銅メダルに輝いている。ワールドカップ優勝後には、東京オリンピックへの強い意欲を公言していた。
新型コロナウイルスの問題が起こらなければ、2020年は7人制代表として東京オリンピックに挑み、2021年は15人制代表として12年に一度しかチャンスが巡ってこない(4年ごとに南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドと順次遠征している)ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズとのテストマッチを経験できたに違いない。しかし、東京オリンピックが1年延期され、不運にも日程が重なり、どちらかを選ばなくてはならなくなった。
ヤマハ発動機ジュビロに所属するクワッガ・スミスも、リオオリンピック3位とワールドカップ日本大会優勝を経験したスター選手で、東京オリンピックで金メダルを狙う7人制南ア代表の候補として期待する声は多い。
さらに、東京オリンピックを視野に入れてセブンズでのキャリアを続けながら、スプリングボックス入りも夢見てスーパーラグビーで挑戦してきたスピードスターのロスコ・スペックマンやシアベロ・セナトラなども難しい決断を迫られている。
リオオリンピック陸上男子400メートルで金メダルを獲得したウェイド・バンニーキルクのいとこでもあるコルビは、現在26歳。スミスも同じ1993年生まれだ。彼らにとって、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズと対戦できるチャンスはほぼ間違いなく来年の一度きり。東京での大舞台をあきらめて2024年のパリオリンピックを目指すという選択肢もあるが、そのときは30歳になっている。