リモートワーク中のNTTコム選手にトップリーグ中止の件を聞いてみた。
千葉・浦安市にあるアークス浦安パークは、国内トップリーグに加盟するNTTコムラグビー部の本拠地だ。
天然芝グラウンドが2面あるのに加え、世界最高クラスの規模と言えるトレーニングジム、ベッドが7台あるケアルーム、公式戦会場さながらのロッカールームを備えたクラブハウスが建つ。
その空間がいま、さながら仮設のオフィスとしての機能も果たしている。社業と選手活動を平行しておこなう社員選手は、3月中旬から新型コロナウイルス感染拡大防止のため出社日数を制限。練習の合間にパソコンを開き、リモートワークに励む。
3月24日の午後のミーティングルームでは、入社1年目の齊藤剣が画面の向こう側での会議を傍聴していた。明大から入った左PRは、法務監査部に所属。ラグビー部OBで元日本代表の木曽一は職場の先輩でもある。
それとほぼ同じタイミングで食堂の前を通ったのは、3年目の湯本睦。東海大出身のSHは、在籍するアプリケーション&コンテンツサービス部で早くも「若手社員の状態に目を配りながら、会社としてより良い働き作りをする」という役目を担っており、この時は電話会議のできる個室を探し歩いていた。
「プレーができないのは残念ではあるのですが、いまの世界の状態を考えれば中止は間違った判断ではないと思っている。この期間に自分自身がレベルアップできることをやっていこうというのが、現状の考えです」
湯本がこう語ったのは、1月開幕の今季のトップリーグの中止が決まったからだ。
「コンプライアンス教育の徹底」のための中断期間にあたる3月23日、再開見込みとされていた4月上旬から5月中旬までのゲームも新型コロナウイルス感染拡大防止を理由に実施されないこととなったのだ。史上初のリーグ不成立である。
部内で通達があったのは、公式発表とほぼ同じタイミング。トップリーグを運営する日本ラグビー協会(日本協会)が各部の代表者に決定を告げたのも、その3日前だった。NTTコムのスタッフは、すでに予約していた4月以降の遠征時の列車やホテルのキャンセル作業、帰国を希望する海外出身選手へのヒアリングなどに忙殺された。
選手もまた、パフォーマンスを披露する機会を失ったこととなる。ただし齊藤は湯本と同じように「他のスポーツでも中止、延期になっているので」と、決定そのものには反論しない。
各クラブでは今季限りでの引退予定者のモチベーションが議論の対象となっているだけに「ベテランの選手がどう考えるかはわからない」としながら、こう前を向く。
「僕には、来年もチャンスがある。トップリーグの開幕後は忙しくなってしまっていたので、(いまの時期は)部署の先輩方とコミュニケーションを取っていっぱい経験値を積んでいきたいです」