コラム 2020.02.28
【コラム】意思決定には二層ある

【コラム】意思決定には二層ある

[ 向 風見也 ]

「周りの環境はいつも慣れているところなんで、ご飯、空き時間(の過ごし方)ではすごく楽なところはあるんですけど、何か便利すぎて。海外に行ったら、不便なことが多すぎるから皆で何とかしようと固まる感じがある。ただ、いまは空き時間も周りに何でもあって、『皆でまとまって茶、しよう』というのがなくなる可能性もある。もっと、海外にいる時のようなことはしたいなと」

 2011年大会から3大会連続でワールドカップに挑んだベテラン戦士は、言葉の通じる自国で過ごすメリットを踏まえたうえで起こりうるデメリットについても具体的に予見。大会期間中は控え選手とコーヒーを飲みに行くなど、チーム力の根を支える平時のコミュニケーション量を意図的に増やしていたのだ。

 この大会で優勝した南アフリカ代表は、決勝トーナメントに入ってから控えのフォワードの枚数を1枚増やすことで自軍のパワフルさという強みを最大化していた。

 準優勝のイングランド代表でも、かつて日本代表を率いたエディー・ジョーンズが開幕2年前の段階で「(大会中)2つの季節を過ごすことになる」と看破。環境への適応力を重視して選んだという大会登録メンバーを、他国に先んじて発表していた。

 日本代表も南アフリカ代表もイングランド代表も、東アジアでの開催という「A」にあたる項目を自分たちの目線で見つめ、自分たちらしい「B」を練り上げていたのだ。

 それらと比べてしまうと、今回のトップリーグ側の決定はまず延期という「B」を支える「A」の設定にやや主体性が見えづらかったような。

 今度の決定における「A」には他競技の事情、この国で広がる「要請」などが挙げられる。ただし、あるトップリーグのクラブの関係者は「同じ延期にするのでも、『Jリーグがこうしたから』ではなく、『我々トップリーグとして…』と発言して欲しかった」と漏らす。

 さらに安倍氏が大規模なイベント開催の規模縮小などを「要請」すると伝える1日前の25日には、日本政府が「イベント等の開催について現時点で全国一律の自粛要請を行うものではない」と発表している。かねて公文書の扱いなどで説明不足の感を覗かせる為政者が、たった1日で真逆の見解を示しているわけだ。

 結論にあたる「B」に深い思慮や複数名の血と汗がにじんでいたのがわかっていても、その結論を導く「A」に関する分析に筋金が入っていないと見えた、と、いう人がいたら、その人は「納得も理解もできるがすっきりしない」と思っても不思議ではなさそうだ。

 翌27日、トップリーグを戦うサントリーが東京都府中市の本拠地で身体を動かしていた。26日の決定を受けスケジュールを大幅に変更したのを受け、日本代表のエースでもある松島幸太朗が取材に応じる。

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