コラム 2020.01.23
【ラグリパWest】主将のつとめ。森田大夢(仙台高専CTB)

【ラグリパWest】主将のつとめ。森田大夢(仙台高専CTB)

[ 鎮 勝也 ]
【キーワード】



 森田は災害を経験した。しかし、それらに屈しなかった。

 小6に上がる2011年、東日本大震災に遭う。自宅は全壊。一時は隣県の山形で避難生活を強いられる。それもあって、高専の5年間は寮から通った。

 昨年10月、台風19号の時には新装なった自宅が断水に見舞われた。
「2リットルの水のペットボトルを10ケースほど車で運ばせてもらいました」
 監督の柴田尚都は振り返る。

 そして、この最終学年は鼻以外にも大けがに見舞われた。

 昨年7月、左足首を骨折する。手術をして1か月入院した。練習復帰は大会直前の12月だった。
「ウエイトトレもできたし、チームを客観的に見えてよかったです。僕が抜けた分、下級生たちが成長してくれました」
 思考はつねにポジティブだ。

 仙台の部員数は36。慣例により、主将は入学前の1年生を除き、投票で選ばれる。
「森田はほぼ満票でした。プレーはしっかりしているし、自分の思いを言葉にできます。実にしっかりしたキャプテンでした」
 柴田は森田の1年間を締めくくった。

 この春の卒業後は、北海道にある室蘭工業大に3年生編入する。最初は鹿児島にある鹿屋体育大を志望していた。
「ラグビーだけではなく、監督やコーチとしてスポーツに関わっていけたらいいなあ、と思いました」
 しかし、骨折で昨年8月の編入試験の実技を受けられなかった。

 室蘭工業大では、高専で学んだ電気システムをベースに情報工学の分野に進む。
「勉強して、会社に入って、社長になれたらいいなあ、と思います」
 残念だった過去を思い悩むことはない。

「ラグビーをやってよかったです。5年間で先輩や後輩を含め、色々な人とつながることができました。このスポーツは仲間のために体を張る。そして、リザーブメンバーを含めた25人が一体になります。その中でキャプテンとしてリーダーシップをつけさせてもらえ、人間性を磨かせてもらえました。」

 大学にはラグビー部はない。
「アメリカンフットボールはあるみたいですけど、地元にクラブチームがあれば、そこで続けたいと思っています」
 5年ではまだやり飽きていない。

 災害やケガを乗り越えた森田。その人生で大きく影響を受けた楕円球をこれからも離さないつもりだ。
 心強い20歳の旅立ちである。


PICK UP