ワールドカップ 2020.01.16

具智元が語るシックス・ネーションズ 「スクラムに透けるスタイルを見よ」

欧州、伝統、一つひとつの場面ににじむ重厚感。いよいよ2月1日にシックス・ネーションズが開幕する。開幕に向けた、日本ラグビー界を支える5名に「シックス・ネーションズが待ち切れない!」と題したインタビュー連載の第1回目。2019年ワールドカップ日本大会でインパクトを残したジャパンのPR具智元は、その体で、シックス・ネーションズのうちの2チーム、アイルランド、スコットランドと最前列で押し合った。猛者たちの体感を知るプロップに、スクラムから垣間見たシックス・ネーションズの世界を案内してもらおう。

[ 編集部 ]
具智元が語るシックス・ネーションズ 「スクラムに透けるスタイルを見よ」
ホームの地・鈴鹿でトップリーグに腕撫すジウォン選手に聞いた(PHOTO:HIROSHI OTA)

■アイルランドのラグビーはスクラムから

「昨年のシックス・ネーションズは何度も見ました。スクラムばかりですけれど」

−−ジウォン選手は、シックス・ネーションズの国々とは直接、スクラムを組んでいますね。

「ウェールズ以外は。そうですね」

−−まずは大雑把に、この5か国の特徴を教えてください。

「そうですね。ヨーロッパはどこも、選手の体が大きい。個々の力がものすごく強い。それは共通点です。その上でまずアイルランドは、どこからでもペナルティを狙って、駆け引きをしてくる。W杯では、組んだ瞬間に、これはいい感覚でいけるなと思った。そこから強引に回して来られて、こちらが反則を取られて、私はちょっと冷静さを失いました」

−−では、スコットランドは。

「意地、闘争心。何がなんでも押してくる。イングランドは、選手によって全然違う。僕の場合は内に内に入ろうとする相手でした(対面はA・ヘップバーン)。フランスは、引き出しが多いですね。チームとしていろいろ考えてくる(J・ポワロ)。イタリア(A・ロヴォッティ)は、うまく組めました。ターンオーバーでボールを奪ったのもありました」

−−では、W杯でのやり取りから、アイルランドとスコットランドについてじっくりと。前半34分のスクラムが語り種です。

「みんなで押しました。相手の1番(C・ヒーリー)と2番の間を割ることができた。堀江さん(HO:ジウォン選手の左隣。翔太)も1番も同じ方向に力を集めることで、一気に押せました。堀江さんに状況を伝えて、回してくる相手への対策を一緒に整理できたのが大きかったです。回させないようにするために、まず相手の1番としっかり組みにいこうと。そうしたら、やっぱり簡単に回されなくなった。相手がそれでも強引に回そうとして、相手の1番と2番の密着が緩くなった。その瞬間に、割りました。堀江さんも『ついていくよ、いっていいよ』と声をかけてくれて、3人で同じ方向に力を集められました。一気に相手が崩れました。アイルランドのラグビー、試合の組み立てはスクラムから始まる。だから彼らにとって、スクラムは特に重要なんです。ジャパンとしてはそこを押さえることに大きな意味がありました」

アイルランド戦のジウォン。スクラム以外でも躍動した (Photo:Getty Images)

■スコットランドはタイトで強気

——スコットランド。ジウォン選手ご自身は、21分に負傷交代になってしまいました。あまり本数は組めていないと思いますが、印象はありますか。

「アイルランドよりはずっとタイトで、味方同士が強くバインドしている、固まってくるイメージでした。ジャパンが気をつけていたのは、相手の3番が落とし気味に組んでくること。落とされないように組むことがポイントでした。

−−相手の1番、A・デル。かなり向こうっ気が強そうに見えました。

「内に差し込まれて、脇腹、やってしまいました」

−−直接的に、彼とのやり取りの中でケガをしたんですか。

「正直にいうと、試合が始まるまでは痛みがある程度だったんですが、スクラムで完全に…。その前のスクラムで、一度スクラムが落ちました。A・デルは、頭が地面に着いた状態で、足をガツガツガツって、掻いてきました。落ちてもまだ押してくる。スコットランドは、何が何でも前に出るという気持ちが強かった」

−−それを聞くと意外なのですが、ジウォン選手がケガでピッチを出ていく前、A・デルがジウォン選手の体に、ぽんぽんと労うように触れたんです。「気持ちわかるぜ」という感じに見えた。PR同士の絆みたいなものを感じました。

「脇腹は、やられたけれど、プレーで起きたこと。相手に対してネガティブな気持ちは全然ないですね。交代の時の向こうの振る舞いも、自然にしてくれたことだと思いますね。A・デルは、ラックやモールでも、すごく激しくて、気持ちが強い。いい選手ですよね」

■それぞれのこだわりが見える

−−シックス・ネーションズでは2月1日、第1節でアイルランドとスコットランドが対戦します。どんなところに注目しますか。

「この大会、この対戦、スクラムは大事です。そして2か国に限らず、それぞれの国にはスクラムにスタイル、プライドがあります。アイルランドにとってはラグビーの起点でもあり、とても重要。スコットランドも反則ぎりぎりのやりとりの中で、何としても押しにくる。スコットランドには今回、フランス系のスクラムコーチがついたと聞きました。スタイルがある中で、どんなアレンジをしてくるのか、楽しみですね」

−−アイルランドは、R・ベスト以外はほとんどが、今回の45人のスコッドに残っていますよ。

「ヒーリーもですか? すごいですね。キャップ数は100近いですよね」

——経験値、一列にとっては特に重要ですね。

「堀江さんにも、その懐の深さを感じます。それと、南アのビースト(T・ムタワリラ)も巧かった。始めは浅く組んできて、それを止めると今度は回しにきて…」

◎ ◎ ◎ ◎ ◎

スクラム論は止まらない。ジャパンとしての出場が叶えば、夏にはウェールズとイングランド、秋にはスコットランド、アイルランドなどとのテストマッチがある。どんな「やり合い」が見られるか今から楽しみだ。体のオーバーホールも終え、まずはトップリーグに集中する具智元選手。トップリーガーたちも注目の欧州6カ国対抗戦「シックス・ネーションズ」は2月1日に開幕、WOWOWでは全15試合を生中継でお届けする。

Profile 具 智元
[日本代表PR /Honda HEAT] グ・ジウォン/183㌢、122㌔。1994年7月20日生まれ、25歳。大分ラグビースクール→日本文理大附高→拓大→Honda HEAT3年目。スーパーラグビー・サンウルブズでは2016年から4季プレー。日本代表キャップ13

★『ラグビー欧州6カ国対抗戦 シックス・ネーションズ』

【放送日】2/1(土)~3/14(土)全15試合生中継![WOWOWプライム][WOWOWライブ]

<第1節>

ウェールズvsイタリア 2/1(土)夜10:55[WOWOWプライム]※無料放送

アイルランドvsスコットランド 2/1(土)深夜1:30[WOWOWプライム]

フランスvsイングランド 2/2(日)夜11:45[WOWOWプライム]

※第2節以降の放送スケジュールはWOWOWラグビーオフィシャルサイトに随時掲載。

>WOWOWラグビーオフィシャルサイトはこちら

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