国内 2019.12.29

初めての女性レフリー、花園の舞台へ。「丁寧に」選手の力引き出す。

[ 編集部 ]
初めての女性レフリー、花園の舞台へ。「丁寧に」選手の力引き出す。
扉を開いた高橋真弓レフリー。12月27日の大分東明×飯田を担当した。(撮影/松村真行)



 落ち着いたレフリングで選手たちの力を引き出した。
 平常心を貫いた結果だ。
 12月27日から花園ラグビー場で始まった全国高校ラグビー大会で、女性レフリーがホイッスルを吹いた。史上初めてのことだ。

 扉を開いたのは、初日の大分東明×飯田を担当した高橋真弓レフリーだった。今回で99回目の歴史ある大会に「初」を刻んだ。
 感謝の心を忘れない。
「女子の試合(過去のU18花園女子セブンズや15人制)に関わってきた方や、これまでの大会でアシスタントレフリーを務めてきた方々がいて、その実績が認められたからこそ、今回につながったと思います」
 いい緊張感の中でキックオフを迎え、35-0の試合をマネジメントした。

 高橋さんは日本協会公認の女子A級、セブンズA級レフリーで、過去にトップリーグでアシスタントレフリーを務めたこともある(2017年)32歳だ。
 全国高校選抜大会、アシックスカップ(全国高校7人制大会)の舞台も経験済みで、普段から大学の下部リーグで笛を吹く。高校ラグビーの全国大会地区予選も任され、先月は神奈川の準決勝も担当した。夏には菅平へ行き、強豪校同士の練習試合を吹かせてもらったことも今回の花園に向けての準備のひとつだった。

 第3グラウンドで刻まれた「初」の舞台に緊張感を持って臨むも、「試合が始まれば気にならなくなった」。いつも通りにやれた。
「これまでやってきたことを、一つひとつ丁寧にやりました。1回戦、2回戦の試合時間は(時計を途中で止めることなく)ランニングタイムでやっているので、インプレーが長くなるように気をつけました」
 プリベントコール(反則をさせないための事前の声かけ)も的確。それでいて互いがしっかりコンテストできるようにした。両チームのやりたいことも頭に入れてゲームを進めた。

 10歳の時に府中ジュニアラグビークラブで楕円球と出会い、すぐに、このスポーツの虜になった。
 中高時代はバスケットボール部に所属も、ラグビーはいつも頭の中にあった。日体大に進学すれば女子ラグビーに打ち込めると知り、高校は同大学の系列である桜華女学院(現・日体大桜華)に進学し、休み時間にラグビーに興じたり、世田谷レディースに加わったり。日体大ではラグビー部に入り、CTBとして活躍する。15人制、セブンズとも、代表選手としてプレーしたこともある。

 レフリーの道に進んだのは、卒業後に日体大でコーチをしている時だ。ケガをして自身のプレーを休んでいるタイミングで勧められたこともあり、志した。
 2011年にC級レフリーとなり、知識と経験を積み上げた。先のワールドカップでも世界のトップレフリーたちのパフォーマンスを観察。「(選手への)声かけのタイミングがそれぞれで、勉強になりました」と話す。「チーム、選手と一緒に試合を作る」ことを心掛ける。
 現在は女子ラグビーの活動に理解のあるデータバンク株式会社に所属。まずは国内の大学1部リーグの試合を担当できるようになり、その先へ進みたいと考えている。


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