コラム 2019.12.19

【ラグリパWest】トライ、関西に凱旋す。中田都来[筑波大FL]

[ 鎮 勝也 ]
【ラグリパWest】トライ、関西に凱旋す。中田都来[筑波大FL]
気持ちの入った表情。応援してくれる多くの人たちの前で走った。(撮影/早浪章弘)



 故郷の関西に凱旋した。

「自分にとっては初めての花園でした」
 文武両道の極みにいる中田都来(なかた・とらい)は笑いじわを刻む。

 トライは56回目の大学選手権で初優勝を狙う筑波のメンバーだ。
 同時に3年の医学部学生でもある。

 12月15日、高校ラグビーの聖地で同志社と戦う。48−17。準々決勝に進んだ。
 神戸出身のトライにとっては、筑波に入って初の関西での公式戦だった。

 右FLで先発。外側でBKとFWのリンクをする。衝突が起きれば、即展開を助ける。監督の嶋崎達也が描く高速ラグビーを支える。

 175センチ、93キロ。入学まではSOやCTBをこなすBKだった。パススキルはもちろん、状況判断の目も持っている

「今は毎日が充実しています。勉強をしながら、同時にラグビーもやれています」
 トライは医学部にあたる「医学群」に学ぶ。医師になる準備をしながら、高校日本代表などの肩書を持つ仲間に引けを取らない。

 その名はラグビー好きの両親から授かる。
 幼稚園から西神戸ラグビースクールで競技を始めた。中学は灘。麻布、開成と並ぶこの国を代表する進学校で中高6年を過ごす。

 花園のスタンドには中高の監督・武藤暢生や現部長の今西雄二、前部長の足立英昭、現役の部員も応援に駆けつけた。
「ウチの練習は中高が一緒にやるのですが、トライは入学してきた時に、高2のエースにタックルに入って、脳震盪を起こさせました」
 武藤はその片鱗を語る。

 その武藤も大学時代は日本体育のFLだった。3年から公式戦に出場する。
「自分も対抗戦でしたが、トライは日本一を目指すチームで2年から出させてもらっている。すごいとしか言いようがありません」
 武藤の慶應の同期にはFB栗原徹(現監督)、明治の1学年上にはNO8斉藤祐也らがいた。2人とも日本代表経験者だ。

 エリートにありがちな、自分の能力を鼻にかけることもない。
「優しい子です。ラグビーでも初心者の子に上からものを言わず、同じ位置まで下がって接していました。野球部や体育祭の応援なんかも自分から率先してやっていました」
 恩師にはいい思い出しか残っていない。

 医学とラグビーの両立を意識したのは高3だった。国体の兵庫県選抜に選ばれる。
「オール兵庫に入れてもらって、上でできるんじゃないか、と思い始めました」
 2016年のチームは予選のミニ国体1回戦で奈良に5−31で敗れる。混成軍の軸は報徳学園。チームメイトには同志社のPR栗原勘之(かんじ)や明治のWTB石川貴大らがいた。


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