法政大からウェールズへ。ウォーカーアレックス拓也の挑戦。

チャレンジにワクワクしている。
法政大学で副将を務めたLOウォーカーアレックス拓也(Walker Alex Takuya)だ。
オーストラリア出身の父と日本人の母を持つ、シドニー生まれの21歳。
3歳で山口県に移住し、中学2年から福岡へ。周南ラグビースクール、かしいヤングラガーズ、東福岡とキャリアを紡いできた。
リーダーシップにも秀でるバックファイブは、高校代表、U20代表に選ばれ、世代最高の才能と切磋琢磨してきた。
今季の法大は、流経大とのリーグ戦1部最終戦をもってシーズンを終えたが、アレックスはこれからも楕円球道を進むつもりだ。ただし、舞台は日本ではない。
「2018年2月から8月までニュージーランドのクライストチャーチに留学をして、サザンというクラブでプレーしました。楽しくて、もともとあった『海外でプレーしたい』という思いが強まりました」
もともと海外は身近な存在だった。3歳から日本で育ったが、生まれはシドニー。英会話のスキルはあり、コミュニケーションに困ることはない。
ラガーマンだった父の影響も大きい。
「父親はオーストラリアだけではなく、いろんな国に行ってラグビーをしていたそうです。カナダやイギリスでプレーしたと聞いています。ラグビーで世界を見て回るのは楽しいだろうなと思っていました」
自分もラグビーで世界に出てみたい。
きっかけを探している時、チームの苑田右二ヘッドコーチが背中を押してくれた。法大OBの指揮官は、日本代表でもプレーした元神戸製鋼のスクラムハーフだ。
「今年、苑田さんから『クライストカレッジ・ブレコン(Christ College Brecon)という高校がウェールズから来る』とお話をいただいて、良いオプションになるからと、お手伝いとしてツアーに参加しました。留学の時もそうでしたが、苑田さんには背中を押していただきました」
ウェールズのブレコン高は、創立400年を越えるイギリスの名門校。今年7月に日本の高校ラグビー部と親善試合をするツアーをおこなった。
「(ブレコン高ラグビー部の)コーチとお話をさせてもらって『行きたい』ということを伝えました。そうしたら『最大限努力する』と言ってくれました。その週に校長先生と連絡をとりあい、先生のアシスタントとしてブレコンに行くことが決まりました」
ブレコン高の先生をサポートするプログラムを利用して、ウェールズへ行く。もちろん名門校の職員になりたいわけではない。
ブレコン高を足場として生活しながら、あくまでラグビーでのステップアップを目指す。
「高校は職場のような感じで、そこにお世話にはなりますが、クラブからステップアップしたいと思っています。地域にはクラブチームが4つあるそうで、どこも受け入れていただけるそうです」
ウェールズのクラブチームから、階段を上っていきたい。5か国リーグ「PRO14」も視界の先にある。ウェールズからはスカーレッツ、オスプリーズなど4チームが参加。今年のワールドカップ日本大会でベスト4に入ったウェールズ代表メンバーの主戦場でもある。
複数のトップリーグチームからコンタクトはあった。ただ「すごく悩みましたが、こちらを選びました」。福岡にいる両親もウェールズ行きを応援してくれた。
大好きな福岡の焼き鳥やうどんは、しばらくお預けになりそうだ。ウェールズ行きは来年夏で、それまではニュージーランド留学で所属したクライストチャーチのサザンで準備をする。
「行くのは来年の8月で、来年春からサザンに戻って1シーズンだけプレーします。英語のカンを取り戻すのもありますし、ラグビーも続けていないと」
法政大の後輩へ向けては「来年も良い雰囲気は続くと思います。すごく楽しみ」。今季は果たせなかった大学選手権出場の想いを託した。
自身は、自分だけのラグビー道を突き進む覚悟だ。
「おこがましいかもしれないですけど、将来的にはラグビーで世界を回れたら楽しいなと。アメリカも魅力的です。自分の努力次第でどうにでもなる、頑張れば道は拓ける、と思っています」
ウェールズの地から、どんな軌跡を描くことになるのかは分からない。だからこそワクワクしている。