RWC2019キャンプ地で使用されたトレーニング機器ブランド”BULL” & 太田千尋 日本代表S&Cコーチ スペシャルインタビュー
ラグビーワールドカップ2019において日本全国50か所以上のキャンプ地で使用された株式会社ザオバのオリジナルトレーニング機器ブランド「BULL」。そして日本代表のトレーニングをサポートする太田千尋S&Cコーチに躍進の理由を聞いた。
ラグビー日本代表太田千尋S&Cコーチインタビュー
ハードワーク&ハードリカバリー
この繰り返しで、もっともっと強くなる。
ワールドカップで初のベスト8進出を果たした日本代表。世界の選手たちにも当たり負けない強靭な肉体をつくりだすために、厳しいトレーニングに励んできた。そのトレーニングをサポートするのが、S&C(ストレングス&コンディショニング)コーチの役割だ。2013年から日本代表のS&Cを務める太田千尋コーチに躍進の理由を聞いた。
ワールドカップの戦いが終わって間もないなか、千葉県千葉市にある「BULL」の展示場でスタッフと打ち合わせをしていたラグビー日本代表の太田千尋S&Cコーチ。スタッフとの会話が止まることはなかった。2013年からラグビー日本代表のS&Cコーチを務め、チームをサポートしてきた。2015 年のイングランド大会ではエディー・ジョーンズHCのもと南アフリカを破るなどプールステージ3勝1敗という素晴らしい成績 を残した。
それから4年、自国で開催されたワールドカップで日本代表として、初のベスト8という成績を残し、さらなる進化を遂げた。
「ワールドカップ期間中はキャンプ地が移動するので、それだけでも選手たちにはストレスになる」
もちろん、それに適応をする力も必要だが、ワールドカップのような一発勝負の舞台では、外的要因を少しでも減らすことが重要になる。限られた場所で、限られたトレーニングをしなければならない。そこで大きな役割を担うのが、ハイパフォーマンスジムだ。
ハイパフォーマンスジムとは、筋力だけではなく、持久力、スピードも鍛えられ、さらにリカバリーもできる。この4つが1つのジムで、効果的、かつ効率的にできる。このジムを完成させるために、2013年からラグビー日本代表より相談を受け、使用されていたのが「BULL」だ。
「どこのキャンプ地でも、同じ機材、同じ環境を安定して整えてくれているのが、大きなメリット」。
ワールドカップの試合がおこなわれる1週間の中で、選手たちはトレーニングだけではなく、戦術を覚えたり、選手同士で話をしたり、いろいろなことを積み重ねてパフォーマンスを発揮している。そのために余計なストレスを与えないことに気を遣っている。
「ジムに入ったらトレーニングをやるぞという環境をつくることが大切」
そのための事前の打ち合わせは何回にも及ぶ。「BULL」のオリジナルトレーニング機器は、日本、アジア用にオリジナルに開発され、細かい高さや調整の間隔などができるように設定になっている。
「自分はBULLさんの一番のクレーマー(笑)。無茶なお願いにも柔軟に対応してもらっている」
設定は細かい部分にまで及ぶ。大きな機器は場所を取るので、人の移動がスムーズにできるようにスペースをつくるように設置する。そのためのラックを置く距離や間隔などを数センチ単位で詰める打ち合わせが何回も繰り返された。
現代ラグビーはハイインパクトな動きを求められている。それに対応するために、ハイパフォーマンスのトレーニングが必要になる。
「ラグビーとしての基本の体力は下半身とそれを支えるための体幹の強さ。そこをしっかりと積み上げた。ここを逃げてしまうと、スピードもパワーもインパクトも出てこなくなってしまう。ワールドカップでハイインパクトな選手たちに当たり負けないために、まずはこの土台をつくることに徹して、そこにスピードと持久力を積み上げてきた」
その結果、2015年大会よりも、下半身の筋力、フィットネスの数値はそれぞれ約20%アップ。選手たちは激しいトレーニングを乗り越え、世界と戦える体をつくってきた。
「ハイパフォーマンスをするためには、ハードワークをして、ハードリカバリーをしないといけない。これを繰り返すことで、人は強くなれる」
2015年大会から、一段階スタンダードが上がって、つかんだベスト8。次の目標はベスト4、そして優勝できるチームになる。そのためには、スタンダードをあげていかなければならない。太田S&Cコーチのチャレンジは続く。
太田千尋
おおた・ちひろ
1979年、千葉県千葉市生まれ。習志野高→国際武道大
〈現職〉ラグビー日本代表S&Cコーチ2015年〜現在。今大会はサイモン・ジョーンズコーチとともにフィジカル強化を担う。ラグビー日本代表アシスタントS&Cコーチ
2013年~ 2015年、スーパーラグビーサンウルブズS&Cコーチ2016年〜現在、慶應義塾大学ラグビー部S&Cディレクター2011年〜現在、パフォーマンスゴールシステム株式会社代表取締役、NPO法人コンディショニング科学研究所副代表ほか