国内 2019.11.23

慶大は産みの苦しみ? 早慶戦へ「やれていることを、ぶれずに」(栗原HC)

[ 向 風見也 ]
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慶大は産みの苦しみ? 早慶戦へ「やれていることを、ぶれずに」(栗原HC)
慶應義塾大の副将・川合秀和(左)と栗原徹ヘッドコーチ(撮影:向 風見也)


 日本最古豪の慶大ラグビー部が今季、苦しんでいる。

 加盟する関東大学対抗戦Aではここまで2勝3敗。8チーム中4位タイで、並ぶのは前年度に3位だった慶大より下位の筑波大と日体大だ。慶大はこの両校との直接対決を落としており、残るは5戦全勝の早大、4勝1敗で一昨季まで全国V9の帝京大とのゲームのみだ。

 タフな状況にあって、栗原徹新ヘッドコーチ(HC)はなんとか前を向く。

「就任1年目で彼ら(選手)をなかなかいいステージに上げられていないのは申し訳ないですが、チームとしては着実に成長している段階です。伸びている部分は、しっかりとあります。いまやれていることを、ぶれずにしっかりやっていきます」

 元日本代表WTBの栗原は、昨季までNTTコムのスキルコーチを務めて今季から母校を指揮。前年度まで早大にいた三井大佑コーチも招き、状況判断力を磨く指導で上位進出を目指してきた。

 部員3ケタ台の学生クラブでは産みの苦しみに直面しているようで、指揮官は「僕も、勉強しなきゃいけない。(指導者が選手を)コントロールすることはいいんですが、(現状の選手は)コントロールされ過ぎているのが現状です」。身長171センチと小柄ながらランとジャッカルが光るFLの川合秀和副将もまた、切実に語る。

「仲間の思いを背負って戦いながら勝ちを獲れないのは本当に申し訳ないと思いますし、そこの部分は本当につらいです」

 転んでもただでは起きないのが、「魂のラグビー」と形容される慶大だ。早慶戦と呼ばれる早大との試合(東京・秩父宮ラグビー場)を11月23日に控え、「(焦点を)絞ってやっていく」と栗原HC。対するSH齋藤直人主将の素早い球出しを念頭に置き、こうも続ける。

「ブレイクダウン(接点)にはプレッシャーをかけたい。そこの生命線でテンポを出されてはきついと感じるので」

 身長183センチの相部開哉、同178センチの今野勇久という小柄な両LO、強靭な身体を接点に差し込むFLの山本凱らのハードワークで、早大の攻め手を減らしたい。

 一方で爆発が期待されるのは、NO8のアイザイア・マプスアにCTBのイサコ・エノサという両新人だ。今年1月に栗原HCらとイギリス留学に出かけた川合は、同部初の海外留学生に関しこうも話していた。

「向こうの大学にも留学生はいっぱいいるんですよ。日本だと留学生の容姿が違うから『外国人だ』となるかもしれませんけど、どこのチームもインターナショナルで、それが当たり前。慶大も伝統にこだわる必要はなくて。多様性があった方がいい」

 試合は14時、キックオフ。大きく変わろうとするタイガージャージィは、伝統の粘り強さを発揮できるか。

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