花園出場の夢は次代へ。初の県決勝進出を果たした埼玉・川越東
俺たちなら花園に行ける。
下級生の頃から、花園初出場の未来を思い描いていた。川越東のNO8佐藤颯亮キャプテンが振り返った。
「経験者は3年生だけで7、8人くらいです。花園出場ということはずっと言っていて、そこに向かって努力してきた代でした」
攻撃スタイルは展開ラグビー。決勝では好パサーのSH西ヶ谷岳(3年)、ランも光るSO北薗海衣(3年)をハーフ団として、レフティーのCTB高橋玄(3年)など素材が揃った。
先発全員が3年生のFWでは、弾性に富んだ突進力を持つNO8佐藤キャプテンだけでなく、スローワーも務めるPR高木秀光(3年)のキャリーも威力大。FWとBKそれぞれに強みがあった。
「2年間かけて展開ラグビーをして、それが花開いた代でした」(川越東・望月雅之監督)
準決勝・昌平戦の後半に見せた勝ち越しトライは、そんな展開ラグビーのハイライトのひとつだったろう。
決勝の相手となった浦和とは、昨年11月の練習試合で対戦して大勝していたという。
しかし年が明けると浦和が逆襲。新人戦の準決勝で川越東を20-12で破り、43年ぶり8度目の新人戦優勝。関東大会予選のファイナルでも1点差(21-20)で競り勝った。
花園初出場を目指す川越東にとって、11月16日、埼玉・熊谷ラグビー場での県予選ファイナルは、3度目の正直を果たす舞台となった。
「前半はキックが多めのプランでした」(望月監督)
SO北薗やCTB高橋がハイパントで空中戦を仕掛けた。また「すごく準備してきた」(NO8佐藤キャプテン)というラインアウトでは、最初の空中戦でHO天新造門(3年)がリフトし、FL庄司悠馬(3年)がカット。準備の力を見せていた。
しかし初の花園予選決勝で、見えぬプレッシャーがあったのか、この日はキックのミスが相次いだ。前半34分にSO北薗がラインブレイクして7-7で折り返したが、キックの判断ミスや浦和のジャッカルによって自陣へ後退。
浦和に得意のモール攻撃の機会を与え、後半だけで4連続トライを奪われた。川越東がチームに染み込んだ展開力を爆発させたのは、22点ビハインド(7-29)で迎えた、ラストの約10分間になった。
「後半に点差を広げられて、強みのアタックを出せました。がむしゃらに攻めました」(NO8佐藤キャプテン)
ボールを左右に大きく動かし、左隅で数的優位を確実に活かしてトライゲッターのWTB江田優太(2年)がフィニッシュ。終了間際にもPR高木がラック正面を突破し、SH西ヶ谷がすぐさまラック脇に押さえた。
2連続トライの喜びも束の間、12点差を詰めるべく自陣へ戻る川越東。自陣から果敢にアタックをするが、浦和のNO8松永拓実キャプテンのジャッカルに遭った。17-29で夢は破れた。
川越東の望月監督は選手へのメッセージを問われ、こう答えた。
「一緒に夢を追いかけさせてもらってありがとう。人生でこの経験は絶対に活きると伝えたいです」
初の花園予選ファイナル進出という歴史は創った。大学でラグビーを続ける予定のキャプテンは、後輩に悲願を託した。
「初めての花園出場を創りたかったです。次の代は、花園初出場という歴史を創ってくれると思っています」(NO8佐藤キャプテン)
想いは次世代に引き継がれていく。