コラム
2019.11.14
【コラム】八八艦隊とガミナラ
ウルグアイラグビーのスピリットを体現する人は試合後、「歴史を作る唯一のチャンスが今日の試合だと思っていた。僕たちのプロ精神を見せられた」と誇った。ガミナラは仕事とラグビーを両立させる自分たちのことを「ハイパープロフェッショナル」と呼んでいる。「報酬はもらえればうれしい。だけど、お金のためにラグビーをしているわけじゃない。仕事しながらラグビーをしていることを誇りに思っている。日本のリーグから声がかかったら、それはハッピーだけどね」
聡明な個性の持ち主であることは、ユーモアに富んだ話しぶりですぐ分かった。自分の小ささを不利に感じたことはないのか。そう聞くと、「反対だね。ラインアウトは背が高い方が有利だけど、低いタックルをしたり、ジャッカルしたりするのに、僕の背の低さは役立っている」。そう言ってから、「生まれ変わったら192センチになりたい」と笑い飛ばした。大きくなる一方の世界のラグビー界で、小さなフォワードの居場所を証明したことも、彼の小さくない達成の一つだった。
大きさを求めた北の鉄人と小ささを生かした南米の闘将。違うようで似たところのある双方が、時を超え、釜石の地で交わったように感じられたのは、ワールドカップならではの醍醐味だろう。大も小も内包するラグビーの懐の深さにも思いが至った。
小林さんの富士製鉄入社からちょうど50年。水色がグラデーションする空の下で行われた釜石のワールドカップは間違いなく、44日間の非日常の中でも、とびきり特別な1日となった。
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