【コラム】都立だからできる。
「去年は春の段階で3年生がかなり辞めていったんです。僕が頑張らせようとし過ぎたら、消化不良を起こしたらしく」
坂本監督が振り返るのは、都大会の2回戦まで進んだ昨季のこと。今回と同じ早実に0—48と屈するまでの間、複数の最上級生が部を去っていた。いまは以前より浪人生活が敬遠されがちで、秋まで活動するラグビー部は受験勉強への不安を増幅させかねない。同じ轍を踏みたくなかった今季は、主将の意見を積極的に受け入れた。
いまは平日にオフを作っているが、そのきっかけは「勉強時間を確保しないと3年生が辞めたくなるかもしれない」という浦田の申し出である。当の本人は「僕も、勉強がしたかったので」と笑った。
早実戦でチーム唯一のトライを獲ったウイングの柳沢勇翔も、「3年生はずっと辞めよう、辞めようと言っていた」と告白する。思い止まった理由は、結局他の仲間が退部しなかったことと、そうなる雰囲気を浦田が作っていたことに集約される。
「お互いがお互いのことを好きだったし、最後までやることに意義があるということになりました」
中学時代は陸上部に所属していた柳沢は、入学と同時にラグビー部に誘われると「先輩たちが盛り上げ役に徹していて。僕もよくわかっていないうちに『うまいじゃん!』と褒めてくれて…」。流れるようにラグビーと出会い、流れるようにラグビーの面白さを知り、流れるように3年目の秋までジャージィを着た。
「ラグビーがやりたかったからではなく、ただ先輩たちの雰囲気がよくて入りました」
高校からラグビーを始めたのに苦しいタックルをし続けられたわけは、背番号14曰く「僕らの強みはディフェンスなので。攻撃はやればできるので、あとはディフェンスで粘るだけ」。肝心の受験について聞かれれば、「僕は…あの、指定校推薦で、先に受験からは解放されて…」とバツが悪そうに笑う。
「他の皆は受験勉強をしながらラグビーをしていて、本当に凄いと思ってます」
坂本監督はしみじみと言う。
「毎年つまらなくなって辞める子がいたなか、3年生では1回辞めて戻ってきた選手が1人で、1、2年生は誰も辞めていない。僕もこの1年間で、楽しむことが大事だと学ばせてもらった」
ラグビーワールドカップ日本大会で日本代表が初めて決勝トーナメントに進んだ今年、全国大会の東京都予選では第1代表、第2代表の予選でそれぞれ1校ずつの都立高校が4強入り。そのひとつが、ベスト4は初めてという白と黒の狛江だった。
キックオフ直前。早実の一団が円陣を組む傍ら、狛江の面々は緑の芝へ気持ちよさそうに寝転がっていた。