勝ち点の重さと、サモアのコンタクトの激しさ。勝負の間で
後半に入った44分、スコアは16−12。中盤地域右寄りの位置でペナルティを得た。PGを狙ってスコアを刻むか、タッチキックからラインアウトモールでトライの可能性を探るか。ジャパンの選択はショット(PG)だった。しかし、そう決めるまでには少し間があった。時間がかかった。
交代出場で経験値を期待されたHO堀江翔太は「割れました」と、選手によって選択の意見が違っていたことを認める。
「割れましたけど、そこはキャプテンの決断なので。いったんこうと決めたら、みんなそれを信じてできていたと思います」
FW陣の多くは、タッチキックからのラインアウトを想定した陣形をとっていた。しかし、決断を下したゲーム主将のピーター・ラブスカフニの選択は最初から、ショットでブレがなかった。
「まずは勝つこと。サモアは強いチームだったし、そこに集中していました」(試合後のラブスカフニ)
このPGは失敗し、スコアはならなかったが、ジャパンは集中を切らさず、5分後には再度ペナルティをもぎ取って、PG成功(19-12)。ここからジャパンはトライを3つ取った。取り切った。今のチームのまとまり、遂行力の高さが浮かび上がった瞬間だった。
同時に、サモアの激しいコンタクト、ブレイクダウンに、いかにジャパンが手を焼いていたかがわかる。マイボールのモールを押し込むこと、あるいは連続攻撃を速いテンポで繰り返すことが簡単ではないという感覚が、この時間帯の日本にショットを選ばせたのだろう。10月5日に超えた山は、スタンドから見るよりずっと、険しかった。
ジェイミーHCが次の山を睨んでいる。
「スコットランドは本当に強い国。経験もあり、多くのXファクターを持っている。今日我々が戦ったサモアとの試合でも非常に冷静、落ち着いた戦いぶりで勝利を挙げている。ただ、それも我々の潜在能力を出していけばきっと越えられる。何年も前からイメージしてきたこの時にワクワクしている。そのプレッシャーを感じながら、当日を迎えたい」
選手、スタッフの心はすでに新境地に入った。