ワールドカップ 2019.10.05

歴史をつくりたかった大勝負で最悪のレッドカード 失望のイタリア

[ 竹中 清 ]
歴史をつくりたかった大勝負で最悪のレッドカード 失望のイタリア
南アフリカに大敗し、落胆するイタリアのセルジョ・パリッセ主将(Photo: Getty Images)


「この試合、我々はすべてを完璧にやらなければならなかったのに」

 イタリア代表を率いるコナー・オシェイ ヘッドコーチは失望していた。
 初のラグビーワールドカップ8強入りを果たすために、計画を立てて準備をし、自信を持って南アフリカ代表に挑んだ。自分たちの力をパーフェクトに出し切れば、勝算はある。勝てば、プールB・3連勝で悲願達成。相手は過去2度の優勝を誇る強豪だが、前半は3-17と競った。手応えはあった。

 しかし後半開始早々、事件が起きた。

 FLブラーム・ステインの好走から継続してゴールに迫った。南アにオフサイドの反則。アドバンテージを見ていたレフリーは、南アのNO8ドウェイン・フェルミューレンがブレイクダウンでボールを奪取したところで笛を吹いた。が、直後、アグレッシブにプレーを続けたイタリアの1番と17番が2人がかりでフェルミューレンを持ち上げ、頭から落とすかたちとなる危険なプレーをしてしまった。背番号1のアンドレア・ロヴォッティにレッドカード。一発退場で14人になったイタリアは、残り約38分間死力を尽くしたが、タフな戦いは完敗に終わった

 試合後、ロッカールームで開口一番「がっがりしている」と指揮官は言った。
「レッドカードで試合は終わった。このようなレベルの高い舞台であんなプレーをしてはいけない。レッドカードは2枚出てもおかしくなかった。本当に愚かな行動だった。それでも選手たちは懸命に戦ったが、強豪に対して数的不利になると、もうどうにもならない。最後まであきらめずに戦ったが、14人では戦いようがない。厳しい試合だった」

 イタリアはこの試合、前半18分までにプロップ2人を失い、ギリギリの戦力だった。開始から1分、背番号3のシモネ・フェラーリがスクラムで押された際に右太ももを痛め無念の交代。代わりに入ったマルコ・リチョーニは18分、脳しんとうの疑いで退出しなければならなくなった。検査のあと、背番号18の右プロップはフィールドに戻れず、スクラムはノーコンテストとなる。そして、レッドカードを提示されたロヴォッティは3人目のプロップだった。

 この試合が世界歴代単独2位の142キャップ目だったセルジョ・パリッセ主将は、「ラグビーで大事なのは、自分ではなく仲間やチームだ。イタリアのファンに対しても申し訳ないと思う」と敗戦を振り返った。「2人のフォワードを失い、試合運びは非常に難しかった。しかし、3-17の時点では試合は終わっていなかった。(後半早々のチャンスに)トライを取ることができていたら、結果は変わっていたかもしれない。あの事故がなければチャンスはあった。ロヴォッティは我々以上にがっかりしていると思う」

 南ア戦で苦汁をなめ、多くを学んだイタリア。失望を乗り越え、プールB最後の試合となるニュージーランド戦ですべてを出し切りたい。ベスト8入りは厳しい状況となったが、イタリア代表のプライドをかけたビッグチャレンジとなる。

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