日本代表アタアタ・モエアキオラが見る「細かいところ」。南アフリカ戦の反省、力に変える。
自身にとって2016年の春以来となる代表戦で、初めて上位国と相まみえた。
9月6日、埼玉・熊谷ラグビー場。ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ(HC)体制下初の日本代表招集が叶ったアタアタ・モエアキオラは、ワールドカップ過去優勝2回の南アフリカ代表とのゲームにベンチ入り。自身と同じWTBの福岡堅樹の負傷により、前半4分から登場した。しかし後半26分には、複数ポジションをこなす松田力也の投入により退いた。7-41で敗れた。
「相手のディフェンスがうまく、自分の強みのランが出せなかった。ワールドカップではどう強みを出せるか、もう一回、準備したい」
身長185センチ、体重114キロと恵まれた体格の23歳は、15歳で来日してから覚えた日本語で淡々と振り返った。この日は強さも披露したが、ハンドリングエラーなどにも泣いた。ほろ苦い時間を過ごした。
「プレッシャーをエナジーに変える」
具体的には、相手防御の方式を落ち着いて見定められるようになりたいと感じた。
「相手のディフェンスがうまいところがありました。相手は試合中にディフェンス(の方式)を変えてきた。そういうことにも対応できるように、ポジショニング、深さ(を変えていく)」
目黒学院中、高を経て2015年に東海大入り。翌年には20歳以下日本代表に加え、若手主体の日本代表(アジアラグビーチャンピオンシップに参戦)にも抜擢された。両軍を教える里大輔スピードコーチの指導により、トップスピードのままどんどん走路を変えるステップをマスター。力と速さの戦士に成長し、大学では主将も務めた。
怪我もあり日本代表からはしばらく遠ざかっていたが、今年、白羽の矢が立てられた。今季始動前、国内の神戸製鋼と同時にニュージーランドのチーフスともサイン。国際リーグのスーパーラグビーでも出番を得て、持ち前のランをアピールしていた。9月20日開幕のワールドカップ日本大会に向け、ジョセフHCから「Xファクター」として期待される。
ラグビー王国と言われるニュージーランドのチーフスでは、実戦仕様のトレーニングでも基礎力が重視された。圧力下で正確なスキルを発動できるか否かが勝負を分けると、骨の髄まで叩き込まれた。おかげでいまは、南アフリカ代表戦時の反省点となった「ポジショニング」などの「細かいところ」を注視するようになった。
「ニュージーランドでは、基本のスキルをやるのが当たり前。ニュージーランドが強い理由は、細かいところをちゃんとやることでした。ハンズアップ(パス捕球時の手の位置)、タックル、ブレイクダウン(接点でのサポートスキル)……。細かいことをちゃんとやりたい」
これから始まるワールドカップ本番では、再びアイルランドなど強豪国とぶつかる。もし出番を得たら、細部に気を配り大胆に攻めたい。