ワールドカップ 2019.08.29
【コラム】「切実」の結晶。

【コラム】「切実」の結晶。

[ 直江光信 ]

 2015年大会のヒーローのひとり、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ就任初年度の日本代表で堀江翔太とともに共同主将を務めた立川理道は、6月の宮崎合宿メンバーに選出されず、トップリーグカップ2019の終了後、プレー感覚の維持とアピールの場を求めてニュージーランドの国内選手権を戦うオタゴ代表に加わった。同じく2015年大会での躍進の立役者のひとりである山田章仁は、フランス・トップ14のリヨンにレンタル加入し、日本代表復帰へ向け懸命のチャレンジを続けている。

 日本代表として22キャップを有し、今季サンウルブズで7試合に出場した内田啓介は、ニュージーランドのタスマンに加わり、8月24日に国内選手権のマイター10カップでさっそくデビューを果たした。ヤマハ発動機の魅惑のHO、代表4キャップを持つ日野剛志も、山田と同じフランストップ14の名門トゥールーズに短期移籍し、ボルドー・ベグルとの開幕戦に先発するなど奮闘している。

 彼らがラグビーワールドカップ日本大会で代表スコッドに返り咲くのは、極めて厳しい状況かもしれない。それでも、その可能性を少しでも広げるためには、いま自分にできることを、全身全霊でやり続けるしかない。歩みを止めれば、その時点で道は途切れる。

 そして、あらためて思う。こうした不屈の勇士たちのあくなき挑戦、挑み続ける意志は、きっと日本代表の力になる。一世一代の決戦で勝敗を分けるのは、ピッチに立つ15人だけの力ではない。日本ラグビーに関わるすべての人々の想いと情熱が、桜のジャージーの背中を後押しするのだ。

 8月29日、日本代表発表。本コラムの冒頭でふれた選手は、31人のメンバーに入ることはできなかった。

 しかし、彼の、彼らのワールドカップが終わったわけではない。ラグビーにケガはつきものだ。同じポジションに負傷者が出た時、ただちにその穴をカバーするために、常に万全の準備を整えておかなければならない。ラグビーワールドカップ2019における日本代表の戦いが終わるまで、彼らの戦いも続く。

 いつ呼ばれるかもわからない状況の中、チームから離れたところで、これまでと同じテンションのトレーニングを続けるのは、並大抵のことではないだろう。でも、その覚悟と献身は、必ずジャパンというチームの一部になる。理屈を越えたパワーを生み出す。

 歓喜。悲哀。矜持。使命感。さまざまな感情が入り混じり、溶け合って、激しくぶつかる。それがワールドカップだ。

(撮影:髙塩 隆)

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【筆者プロフィール】直江光信( なおえ・みつのぶ )
1975年生まれ、熊本県出身。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。早大時代はGWラグビークラブ所属。現役時代のポジションはCTB。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)。ラグビーを中心にフリーランスの記者として長く活動し、2024年2月からラグビーマガジンの編集長

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