コラム 2019.08.08
【ラグリパWest】久住ラグビー合宿を創り上げた男。 鷲司英彰

【ラグリパWest】久住ラグビー合宿を創り上げた男。 鷲司英彰

[ 鎮 勝也 ]
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 鷲司は大分舞鶴から成蹊大に進んだ。大学で本格的にラグビーを始める。ポジションはバックス。今で言うユーティリティーだった。
 商社系の会社員を5年、地元に戻って公務員を4年つとめ、研修センターを立ち上げた。

 以前から、大分舞鶴などで監督経験のある木下應韶(まさつぐ)に師事。県内の由布院や湯平(ゆのひら)で合宿を手伝っていた。

 湯平のグラウンドが地崩れを起こしたこともあり、代替地として久住に目をつけた。
「この辺りは土地が広い。グラウンドができないか。作れば、ラグビーには特有の結束の固さがある。そこを外さなければ、なんとかなるんじゃあないだろうか」
 企業で働いた履歴は利を見る目も養う。

 盛況になる中で、感じたことがある。100人の集客を目標にしたイベントにたとえる。
「最初、10人しか集まらなかったら、多くの人は来年、残りの90人を集めようとする。なぜ、最初の10人を大切にしないのか。彼らに満足感を持ってもらうように動けば、自然とその輪は広がっていくと思うのですが…」
 何をしに来たのか、どうしたいのか、相手の立場で考える。独善的にはならない。

 鷲司は夏の合宿期間中の1か月、車で10分かからない場所にある自宅には帰らない。相談役として、この研修センターで暮らす。

 指導者が泊まる研修棟の食堂では毎晩、ミーティングがある。アルコールがつく。
「ビールと焼酎で5杯くらいしか飲みません。ただしジョッキでですけど」
 色々な人間と語らうことは楽しい。

 ラグビーのよさは「思いやり」と言う。
「カバーですね。ディフェンスで抜かれることもある。でも、足が遅いからおまえはダメじゃなく、カバーすればいいんじゃないか、というところにいきつく。それがいい」
 宗教家としても共鳴できる部分である。

 鷲司の子供は男3人。末っ子の仁(じん)は東海大仰星から慶應大に進んだ。現在4年生。学生コーチをつとめている。
 楕円球との縁は、研修センター同様、これからもますます発展していくに違いない。


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