【ラグリパWest】15歳のスタート、還暦のスタート。 兵庫県立西宮南高校
西宮南には以前から顧問がいる。
OBでもある中井健二だ。教科は同じ。44歳の元ナンバーエイトは尊敬を口にする
「山瀬先生は僕を立ててくれます。生徒との接し方というか距離感が絶妙ですね。言う時と見守る時の使い分けがすごいです」
中井は天理大で八ツ橋修身の1学年下だった。日本代表キャップ12を持つフルバックは今、天理大のバックスコーチだ。
富井の入部に中井は目を細める。
「ひとりなんで、ラグビーを楽しめる技術を身に着けてもらって、社会で活躍できる立ち居振る舞いを覚えてくれたらいいと思います。大切に育ててあげたいです」
15歳は、3年後の未来予想図を描く。
「自分で考えてしゃべるのがあまり得意ではありません。そういうことがしっかりとできるようになりたいです。プレーでは踏み込んで前に出られるようにしたいです」
合同練習は土、日の週末。平日は顧問とマンツーマンでパスやタックルに励んでいる。
山瀬は言う。
「富井くんを軸にして、この名門チームを復活させたいですね」
西宮南は67回大会で花園1勝を挙げた。
1回戦で作新学院を17−11で破る。2回戦は布施工に3−14で敗北。翌年から2年連続で県予選決勝に進出した。報徳学園の前に15-22、3-10で敗れ去ったものの、44年の部史の中でハイライトの時代だった。
ジャージーは黒。胸には「南」を示すエムのローマ字が入る。
部のOBには俳優の松尾諭(さとる)、アニメーション監督の藤田陽一らがいる。
シンガーソングライターのあいみょんもこの学校に籍を置いた。
名門公立を再興させるために、ひとりでも多くの部員を集め、まずは15人制に出場したい。そこから白星を重ねる。道のりは遠いが、チームは今も存続している。
人生の酸いも甘いもかみ分けた山瀬、さらに中井、そして富井がその先駆けとなりたい。