コラム 2019.07.19
【コラム】俺のワールドカップ

【コラム】俺のワールドカップ

[ 向 風見也 ]

「正直、大学1年の頃はもっとうまい人たちとラグビーをしたいと思っていました。でも2年になった時、これじゃよくないと思いました。ラグビーがうまくなるよりも人として成長することに重きを置いて、周りをモチベートするには自分がどう行動すべきかを考えています」

 セッションを打ち上げてこう話すのは、法学部地球環境法学科4年の菅原大幹。選手42人、マネージャー18名の先頭に立つ2019年度の主将で、センターを務める。
 
 出身の神奈川・桐蔭学園高では3年時に全国高校ラグビー大会で準優勝していて、その頃のチームメイトだった齋藤直人と栗原由太はそれぞれ早大、慶大の主将になっている。下級生の頃に後ろ向きな考えに陥ったのも自然だったが、いまはいまで自然と前向きな決意を明かす。就職活動は来年おこなうという。

「自分たちでミーティングの資料を作ったり、グラウンドを取ったり。この組織をどうよくするかを選手が考えるのは上智大ならでは。考えて動く能力が培えます」

 菅原とともにセンターに入る副将の中矢健太は、兵庫・甲南高を経て現在は文学部新聞学科に通う。ゼミでは2015年のワールドカップイングランド大会後の日本のラグビー報道について調査し、卒業後は関西のテレビ局に入社しそうだ。
 
 最近は故障のため松葉杖生活を強いられるが、青山公園へ客人を迎えれば「あの緑色のシャツを着ている奴は…」「あそこでいまキックをした奴は…」と、多彩なストーリーを持った仲間を嬉々として紹介する。日本代表のリーチ マイケルキャプテンが38歳のトンプソン ルークや若きリーダー候補の姫野和樹を誇るのと同じ構図だ。
 
 経済学部経営学科1年の清水崇之は、もとは静岡サレジオ高の陸上部員。中学時代に親しんだサッカーを続けるつもりが、新歓時期に出会ったラグビー部の先輩たちの優しさに惚れた。
 
 入部間もなく経験者のタックルで吹っ飛ばされたが、その様子が映った動画を無料通話アプリのトップ画面に組み込んだ。負けじ魂を消さないためだ。

「いつか逆になりたいなと。自分はいま部内で一番、体重が軽い。トレーニングしなきゃいけない」
 
 東京・桐朋高出身で2年の台直也は、浪人時代に志望先を難関大の法学部に絞り、上智大の法学部法律学科へ入学していた。7月21日の参議院選挙を控え「この政党はここがいいけどここが…みたいなのばっかりで」と頭を悩ませるのだが、大学でサッカーからラグビーへ転じたわけはシンプルに語る。

「ラグビー部の人は本当にいい人で、器の大きさが違う。皆ラグビー愛が強いのに、ラグビーばかりしているわけじゃない」

 ポジションは清水と同じ、仕留め役のウイング。昨季オフに潰瘍性大腸炎を患いながらも競技を辞めなかったのは、初心者の頃から現主将の菅原に気にかけてもらったことと無縁ではなかろう。青山公園に行った日は、菅原からもらった桐蔭学園高の公式戦用の短パンを履いていた。

「ラグビーって、きついなかで人とコミュニケーションを取らなきゃいけないスポーツ。それができる人たちって、相当に強いメンタルを持った人たちだと思います。自分が辛い時に他の人に優しくできる人が、この部活には多い」
 
 理工学部機能創造理工の宮尾太郎は、大学院2年目ながら後輩の求めに応じてラグビー部に残っている。理系学生は実験などに時間を割かれるとあって、「学部の時以上に練習に出づらくなるけどいい?」と念を押したものだ。

宮尾太郎。大学院では自動運転の研究に没頭(撮影:向 風見也)

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