コラム 2019.07.12
【コラム】ふたりのフルバック。

【コラム】ふたりのフルバック。

[ 田村一博 ]
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 東福岡高校を離れて15分後。福岡空港で19歳のフルバックに会った。
 田口弘煕(ひろき)。
 フランスの最高峰リーグ、トップ14の下部にあたるPRO D2に所属するヴァンヌのU22チームでプレーしている。
 故郷・福岡で中学校を卒業し、単身で渡仏して3年。異国の地でたくましく生きている。

 田口の目が海外に向いたのは7歳のとき、2007年だった。
 同年のワールドカップで3位に躍進したアルゼンチン代表のSO、ファン・マルティン・エルナンデスに憧れ、父・辰二さんに「将来はアルゼンチン代表になりたい」と言った。
 5歳のとき、父がコーチを務めていた平尾ウイング(ラグビースクール)に入った。その後、城南スポーツクラブで中学までプレーを続ける。中学3年時はシャルマンRFC(合同チーム)で試合にエントリーし、そこでの活躍が認められた。福岡県中学選抜の一員となり、全国ジュニア大会にも出場した。

 選抜の仲間たちが東福岡など強豪校に進学するタイミングで、別の道を歩み始めた。
 アルゼンチン代表になりたい思いは、「将来、プロのラグビー選手としてプレーしたい」に変化していた。「世界と戦いたい。だから、はやく体感したいと思いました。フランスのトップ14は南半球のトップ選手が目指す。だから、その人たちが向かうところに最初から行こう、と」

 16歳で海を渡る。フランスのほぼ中央に位置するヴィシー(Vichy)に暮らし、クレルモン=フェラン大学の語学学校へ。現地のクラブチームでプレーした。
 そこで1年過ごした後、クラブのアルゼンチン人コーチの紹介で英国寄り、ブルターニュ地方のヴァンヌ(Vannes)に移籍する。
 ワンランク上のクラブに移り、いま、渡仏して3年が経ったところ。シーズンオフに帰郷している機会に、近況を伝えてくれた。

 ヴァンヌに所属してから、試合給をもらえるようになった。1試合で50ユーロほど。日本円にして約6000円だ。2018-2019シーズンは約20試合のうち半分ほど出場した。
 同じカテゴリーでプレーしている選手も、クラブとの関係はそれぞれだ。その中で、決して金額は多くないがプレーへの対価を手にできるのだから、クラブに必要とされている。
 来季は試合ごとの支払いはなくなるが、月ごとのサラリーを手にできる見通しだ。ホームステイ先から独立し、一人暮らしも始める。「勝負の年」と思っている。

田口弘煕、19歳。ヴァンヌのU22でプレー中

周囲同様、試合、練習は瞬時にスイッチが入る

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