ラグビーの金足農も全国目指す。ラグビー部は果敢にラン&パス。
金足農業と言えば、昨年の全国高校野球大会で準優勝した野球部が話題を集めた。同じ高校のラグビー部でSHをする高橋虎大は、「次は自分たちの出番。金農ラグビー部の名を轟かせたいです」と笑った。きっとこの話題については、いろいろな大人に聞かれ慣れているのかもしれない。
6月16日、雨の新青森県総合運動公園球技場。ラグビーの東北高校大会は最終日がおこなわれ、金足農は2つあるカテゴリーのうち「2部」で優勝。高橋は幼なじみの伊藤薫とHB団を組み、決勝で盛岡工を24-7で下した。
伊藤は「キック主体。風下では動かしながら、風上ではすぐに蹴る。敵陣で勝負しようと思いました」とするが、その「敵陣」へ入った後は果敢にパスをつなぎ前進。豪雨のなかでも手堅く攻めるより、スペースを射抜くことを優先とした。
接点の球を素早くさばいた高橋は、大外の空間に飛ばしパスを放つなど視野の広さをアピールする。
「自分の組み立てた攻め方でトライを取れたり、大きくゲインを切れたりすると楽しいです」
本来FBもこなすSOの伊藤は、走りで光った。自陣22メートルエリア右から左へ回り込んでのキック捕球から、柔らかいフットワークでのカウンターアタックを披露。7-7で迎えた後半序盤には、敵陣ゴール前右中間で「相手(対面)が(身体の大きな)FW。外に仕掛ければ(スピード勝負で)いける」とボールをもらいトライを挙げた。徐々に加速しながら、タックラーをかわせる。
「敵を抜いたり、トライを取り切ったりするのが好きです」
2人は幼少期から、高清水ラグビースポーツ少年団、将軍野中で楕円球を追ってきた。いずれも父の母校だという金足農へ進み、「コウギョウを絶対に倒そう、自分たちの代で花園に行こうという気持ちでした」。ここでの「花園」とは大阪・東大阪市花園ラグビー場での全国高校ラグビー大会で、「コウギョウ」とは伝統校の秋田工業。金足農は全国大会出場6回の実績を誇るが、長らくその舞台から遠ざかっている。
「いろいろと経験を積ませてもらいました。(時間が過ぎるのは)早かったです」とは、3年生になる高橋。一緒に目標達成へ動いてきた伊藤は、「学年が上がるにつれてどんどん勝てるようになってきた」。夢舞台との距離感を、具体的に見定めつつある。
強力な援軍もいる。今季から、かつて早大やトヨタで活躍した内藤慎平監督が就任。前秋田工コーチでもある内藤監督には、伊藤も高橋も「試合前にビデオで分析してくれるのがわかりやすい」と信頼を寄せる。秋の全国大会県予選で地殻変動を起こすべく、フィジカリティ、フィットネスの基礎を構築したい。