海外 2019.06.03

苦戦サンウルブズから高みを目指す歴戦のプロップ。浅原拓真と三上正貴。

[ 多羅正崇 ]
苦戦サンウルブズから高みを目指す歴戦のプロップ。浅原拓真と三上正貴。
サンウルブズには4年連続参加の浅原拓真。今季は6月1日のブランビーズ戦が初先発だった(撮影:松本かおり)

 開幕まで4か月を切ったワールドカップ日本大会へ、仕事場のスクラムでアピールを――。しかし日本代表で指導を受けてきたスクラムと、スーパーラグビー4季目となるサンウルブズのスクラムは異なっていた。

 2勝12敗でリーグ最下位が確定した6月1日のブランビーズ戦で、今季出場7試合目ながら初先発となった右PR浅原拓真は、その違いをこう説明した。

「慎さん(日本代表・長谷川慎スクラムコーチ)は8人で組ませるスクラムです。こちら(サンウルブズ)は個々でやっている感はあるので、そこはちょっと難しいところです」

 この日途中出場した左PRの三上正貴は、浅原と同じく今季サンウルブズで実戦経験を積んできたフロントロー。

 ともに東芝で経験を積み、年齢も30代を折り返したばかりと共通点も多い。

「バインドの掛け方も違います。日本代表は間合いを詰める。こちらは間合いをとって、海外のチームのように当たります」(三上)

 三上が沖縄合宿を離脱してサンウルブズに合流したのは今年3月下旬。それから2か月以上経ったが、今季サンウルブズのスクラムに馴染んできたのは「最近」だという。

「パッと参加して1日で合ったりもしますし、1、2か月経ってもしっくりこなくて、半年で合ったりもします。(サンウルブズのスクラムは)最近になって良い感じです」(三上)

6月1日のブランビーズ戦、接点で激しくファイトする三上正貴(撮影:松本かおり)

 今季国内ラストゲームのブランビーズ戦。狼軍団はスクラムに苦しんだ。

 ブランビーズ戦のスクラムのコンセプトは横とのつながりだったという。肩の位置も調整した。

「横とつながってコミュニケーションをとって戦う、というコンセプトでした」(浅原)

「先週は肩のラインが合っていませんでした。そこをフラットにしようと話していました」(三上)

 しかしWTBホセア・サウマキの先制トライに沸いた直後、前半4分のファーストスクラム。サンウルブズの先発8人の合計体重は894キロ、相手は892キロ。

 組み直しのあと、フェデリコ・アンセルミ レフリー(アルゼンチン)はサンウルブズに反則の笛を吹いた。以後もスクラムで再々ペナルティを取られた。

「相手が1番(ジェームズ・スリッパー)の方からステップアウトして回してきて、そこでペナルティを取られてしまいました。落ちたら全部こちらがペナルティを取られました」(三上)

 サンウルブズとしてもしっかりプレッシャーをかけられなかった。

「まずこちらがプレッシャーをかけていないので、反則を取ってもらえませんでした」

 1万6741人の観客を前に、前半のサンウルブズは9点ビハインド(12-21)と健闘した。

 しかし後半のブランビーズは、相手反則→ラインアウトモール→トライの黄金パターンを確立。後半から途中出場のHOコナル・マキナニーがハットトリック。サンウルブズは19-42で7連敗を喫した。

 敗戦後、取材エリアにやってきた歴戦のプロップ2人に笑顔はなかった。

 ワールドカップへ向けて、なかなか馴染まぬスクラムで見せ場を作らなければいけない立場。それでも両者は未来へ向けて殊勝だった。

「あと2試合あるので、頑張ります」(浅原)

「(アピールの)機会をもらえている。もらえない人もいるので、もうそれだけで」(三上)

 今後どんな展開が待ち受けているのだろう。サンウルブズは6月9日、南アフリカの敵地DHL ニューランズ(ケープタウン)で、今季3勝目を懸けてストーマーズと戦う。

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