コラム 2019.05.30
【ラグリパWest】純白ジャージーのための二世代。 松隈孝行・孝照(奈良・天理高校)

【ラグリパWest】純白ジャージーのための二世代。 松隈孝行・孝照(奈良・天理高校)

[ 鎮 勝也 ]



 孝照は6人兄弟である。双子の姉がおり、その下に2学年上の兄・孝太郎がいる。現役時はウイングで、大産大から大阪府警に奉職した。現在は監督をつとめる。3学年下に弟・孝三。法大、クボタで主にセンターとして活躍した。3兄弟とも天理OBだ。末の妹は音楽の道を歩み、チェリストになる。

 孝照はウイングとして高2からレギュラーをつかんだ。69回大会(1989年度)では優勝。決勝では啓光学園(現常翔啓光)を14−4で降した。70回大会では準優勝。連覇は熊谷工に絶たれた。9−19だった。

 父に関して、高1の正月、鮮烈な思い出がある。お屠蘇をいただいた時、メンバー入りできなかったことをなじられた。
「がんばれへんからや」
 名門校で、新人の立場で、当時の22人に入るのは難しい。ただ、父にとっては親として「見続けた」すえの言葉だったのだろう。

 孝照は驚いた。
「普段は一切、ああせえ、こうせい、と言ったことのない人でした。だから、すごく印象に残っています」
 その言葉が奮起を促し、翌年の優勝フィフティーン入りにつながったとすれば、的を射た怒りに違いなかった。

 孝照は天理大を卒業後、帝塚山大のコーチなどをつとめ、2012年4月から監督に就任した。保健・体育教員でもある。

 父のころと違うのは、同じ奈良県内に御所実というライバルが出現したことである。
 監督の竹田寛行は社会人の「奈良クラブ」時代、監督だった父の指導を受けている。

 孝照が監督になって7年。
 これまでの御所実との全国大会県決勝は3勝4敗。勝って出場した93、95、98回大会はすべて8強戦で桐蔭学園に敗れている。
 咋冬の98回大会、トライ数は同じ5だったが、29−44で4強入りできなかった。
 御所実はその間、2度準優勝をしている。

 新チームになった近畿大会と選抜大会はともに4強敗退。近畿は優勝する京都成章に14−21。選抜は御所実に21−22だった。
 5月18日の県新人(春季)大会決勝では御所実に29−21。選抜の雪辱を果たす。
「まだ春。でも勝てたことは大きいです」
 経験が勝利への道筋を照らしつつある。

 田仲は現体制での全国優勝に触れる。
「1年でも早く勝ってほしい。親の思いを受けて、テルがやってくれたら、何よりの親孝行だと思います。意義のあることです」
 今年75歳。関西ラグビー協会の副会長は思いを口にする。

 天理の最後の全国優勝は69回大会。正選手だった孝照は17歳。今は47歳になった。
「いろんなOBがいる中で、選手としても、指導者としても、たいした実績がなかった僕が監督をさせてもらっています。だからこそ、みなさんの期待に応えないといけません」
 父が作った黄金期。その時代を息子によって、もう一度取り戻したい。


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