試合という教材から何を学び、活かしたか。帝京大2年の奥野翔太の場合。
帝京大ラグビー部の岩出雅之監督は、成長の機会を逃さなかった。
4月28日、東京・帝京大百草グラウンド。関東大学春季大会Aグループ初戦でのことだ。右PRとして先発した2年の奥野翔太は後半9分に交代すると、指揮官に手招きされる。視線の先で試合が続くなか、訓示を受けた。
「悪いプレーがあったら、次には挽回するというメンタルでいかなきゃだめだと。ハーフタイムからそのご指摘があって、後半早々で、それを修正できなかった。それは、監督も僕も感じたことでした」
すべてを終えると、奥野はこう口にした。
チームは激しいコンタクトを披露して50-19で快勝したものの、17-12とした前半、持ち場のスクラムで押し込まれた。問題は、いったん苦しんでからの心持ちだったという。即席の個人面談でも、簡単に下を向くなといった類の話がなされたようだ。もともと自信を持って試合に臨んでいたという奥野は、こうも続けた。
「きょうはうまくいくとしか思っていなかったのですが、うまくいかなかったことで落ち込み過ぎた。悲観し過ぎて、いいプレーができなくなった。しかも、自分がそうなっていることが周りにも伝わってしまって……。戦力にならなかった」
学んだことを活かす機会は、すぐに訪れた。代わって入った2年の細木康太郎が故障したことで、奥野は後半35分に再投入される。「時間は少なかったですが、監督からもご指摘があったコンタクト、スクラムで挽回しようと思いました」と、スクラムでは好プッシュを披露。失敗しても挑み続けるマインドをつかみかけたようで、「春からやってきたことを、少しはできたのかな」と安どした。
試合の感想を問われた指揮官は「失敗を学習に活かす。挑戦心を持っていかなきゃいけないね」とし、奥野との対話について触れられると「(奥野にも)いま言ったようなこと(試合の感想として話したこと)を、言ったの」と笑った。アスリートにとって、試合は教材になり得る。
奥野は身長177センチ、体重103キロ。強豪クラブで自分を高めるべく、大阪・常翔学園高から帝京大入り。「いい時も悪い時も関わってくださる」という上級生たちに「温かさ」を感じ、いまに至る。
クラブが成し遂げてきた大学選手権の連覇は昨季、9でストップ。今季からレギュラー争いに本格参戦しそうな奥野は、控えめながらも再出発へ意気込む。
「うまくいかなかったときに落ち込み過ぎたことが、次への収穫となるのかなと思います。もう一度、連覇ができたらいい。その前に僕自身もやるべきことをやる。強みを活かしていきたいです」