日本代表 2019.04.30

登場と同時にドリブルトライ。ウルフパック山沢がパーカーから学んだこと。

[ 向 風見也 ]
登場と同時にドリブルトライ。ウルフパック山沢がパーカーから学んだこと。
フォース相手の強化試合に終盤出場したウルフパックの山沢拓也(撮影:山口高明)

 インパクトは強烈だった。

 4月27日、東京・秩父宮ラグビー場。山沢拓也は、日本代表候補のウルフパックの一員としてウェスタン・フォースとの強化試合に後半29分に登場する。

 3分後、大きな見せ場を作った。自陣10メートル線付近での防御局面だった。スクラムから出たパスの弾道を追うなか、目の前に転がったボールをドリブル。一つ、二つ、三つと徐々にタッチを弱め、ちょうど敵陣ゴールエリアでバウンドを落ち着かせる。最後は自らトライを決めた。

 思えば埼玉・熊谷東中ラグビー部時代は、校外のクマガヤSCでサッカー選手として強豪校からスカウトされていたもの。足技は見事だった。

 ラグビーワールドカップ日本大会に向け、日本代表でのSOの定位置争いで3番手に位置。不動の田村優、パナソニックの同級生でこの日先発の松田力也を追う。グラウンドに出るやビッグプレーを決めた24歳は、日々の努力で序列を覆したいという。

「力也とかに比べると、ゲームの理解力、プランの遂行力は劣っている。それを解消するには試合に出たり、試合への準備を一つひとつ大事にしていくことが必要。レベルアップしていきたいと思います」

 身長176センチ、体重81キロ。本格的にラグビーを始めた深谷高1年時から抜群のボディバランス、スキル、練習熱心な姿勢が買われ、周りからは「2019年の日本代表のSO」ともてはやされた。筑波大時は故障に泣いたが、最終学年時の2016年にパナソニック入り。日本代表としては2017年以降3キャップを獲得している。

 ワールドカップイヤーの今季は、2月からナショナル・デベロップメント・スコッドの一員としてラグビーワールドカップトレーニングスコッドキャンプに参加。基本スキルを磨いた。

 そして3月下旬からの約1か月間は、サンウルブズに入り国際リーグのスーパーラグビーへ参戦。出場機会こそ少なかったが、名手から多くを学んできた。

 というのも事前に、日本代表のアタックコーチでもあるトニー・ブラウン ヘッドコーチから「ヘイデン・パーカーの試合への準備を参考にした方がいい」と言われていたのだ。指揮官の助言通り、高いゴールキック成功率を誇るサンウルブズ不動の司令塔のパーカーをつぶさに観察する。その結果、「準備」の大切さを再確認した。

「(パーカーは)気になったことは自分がわかるまで周りに話を聞いて、自分がいいと思うまでキックやパスの練習をしていた。本当に、試合に向けていい準備をしているなと感じました」

 グラウンド内外で細かく意思疎通を図り、必須のスキルを徹底的に確認する……。そんなパーカーの姿に、山沢は感銘を受けた。かくして臨んだウェスタン・フォース戦は、ウルフパック合流後の初陣だった。

 投入された折は、44-31とリードも直前に連続失点を喫していた。自らの役割をこう定めた。
 
「点差では勝っていたので、基本的には自分が出るまでのゲームプランを崩さずにいこうと思いました。ただその時は、チームに勢いがなくて相手に勢いを与えた状態でもあったと感じた。いいインパクトを与えられたらと感じました」

 結果として、登場直後のワンシーンを創出。以後の攻撃シーンでも、首尾よくスペースにボールを回した。

 接点から遠い位置につき、手前のFWの選手の背後から駆け上がって球をもらう。駆け上がる。相手タックラーと正対しながら、自身より後ろから勢いよく駆け上がる味方にパスを預ける……。このようなシーンを複数、創出したのだ。山沢からパスをもらった選手は気持ちよさそうに前に出ていたような。とにかく持ち味なら、発揮した。

「外からちゃんとコールがあって、自分が『どうしよう、どうしよう』となることもなくスペースにボールを運べた。ボールを回すことに関しては、よかったです」

 当の本人は、周りからの声掛けに感謝する。名手のよきところを採り入れ、「理解力」「遂行力」の高まりを首脳陣に示したい。

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