流経大柏・相亮太監督は、今年も濃密な「授業」をする。
指導者と選手との距離感が垣間見えたからだろう。前年度の全国高校ラグビー大会で初めて4強入りした流経大柏の動画が、インターネット上で話題を集めた。
映っていたのは、大阪・東大阪市花園ラグビー場のロッカールームだ。相亮太監督が準決勝で敗れた選手を集め、訓示。当時の葛西拓斗主将の肩に手を置き、「いいチームだったな」とその場を去った。MBS全国高校ラグビーの公式ツイッターアカウントがその一部始終をアップすると、4月上旬までに922件の「リツイート」と3322件の「いいね」がついた。
もっとも当の本人は、どこ吹く風である。この人の職業倫理に沿えば、自然な流れだった。
「あぁ、校長先生も観たって。…でも、主役は選手ですから」
4月2日、埼玉・熊谷ラグビー場のCグラウンド。新チームを始動させた流経大柏は、全国高校選抜大会の予選プール最終戦を終えた。ゲインラインを鋭く破る天理に7-52で完敗。特に後半は、風上に立って勢いに乗りたいところで38失点を喫した。他校が次の試合を始めるかたわら、指揮官は芝生の隅に自軍選手を集める。問いを投げかける。
「後半、相手のアングル(パスをもらう選手の駆け込むコース)はどっちに来ていた?」
「外です」
「その時、うちのディフェンスはどっちを見ていた?」
教え子が口ごもれば「で、結果として? …(相手を)止められ、なかったよね」と、皆の顔を観察しながら話を進める。当事者に課題を自覚させるため、対話の形を取ったのだろう。指揮官はこうだ。
「(指導者が)答えを出しちゃうのは簡単ですが、いかに彼らがライブで得た経験を引き出し、活かすか、です」
その後は「ディフェンス。修正しよう」と、レギュラー選手に試合さながらの防御ラインを作らせる。控え選手に天理の攻撃方法をまねさせ、トライを奪われたシーンの防御網がどうなっていたか、本来ならどんな防御をすべきだったかを共有する。強度の高いいわゆる「罰練習」ではなく、選手に質問しながら進める「補習授業」のようだった。
「あぁ、授業ですね。確かに。天理さんとやると、勉強になります。(天理は)我慢する力が格段に上でした。やっぱり、授業はすぐにやらないと。放課後の居残り勉強じゃなくて。花園が終わってから、まだディフェンスを整備できていなかった。また、きっちりやります」
4強入り時から大きくメンバーが入れ替わったいま、元日本代表FLの37歳は「もう一度、チームという枠組みを外す。いままでは去年のアタック、ディフェンス(のシステム)を移行して戦ってきたけど、(以後は)いまの選手たちに合った形を肉付けしていく」。昨季は準決勝まで進んだ選抜大会で、今回は予選プール敗退(2勝1敗)となった。ここで受けた痛みも無駄にせず、春の地区大会、夏の7人制シーズン、秋から冬にかけての日本一への道を見据えてゆく。
「まだまだ。最後(冬)、花園で勝てばいいんだよ」
2019年度も、部員たちと濃密な時間を紡ぐ。