【ラグリパWest】ワールドカップ参加の吉報を待つ。久保修平 日本協会A級レフリー
吉報を待つ。
久保修平の今の心境だ。
日本ラグビー協会最上のA級レフリー。
今年9月、日本開催のワールドカップ(W杯)での審判団入りを熱望している。
構成はレフリー12、アシスタント・レフリー(AR)7の計19人になる。
当落の知らせはすぐだ。この4月に入ってくる。開催国枠は存在しない。
「キャッチコピーじゃないけれど、自分にとっては一生に一度です。2015年以降、特にここを目指してやってきました。その思いが形になって、ピッチに立てたら最高ですね」
37歳の久保は力を込めた。
ただし、残念ながらレフリーで加わる可能性は低い。入るとすれば、タッチライン外が主となるARになる。
今年、南半球を中心とする国際リーグ・スーパーラグビー(SR)のレフリー15人から外れた。2016年、初の日本人として栄誉に浴したが、3シーズン10試合でひとまず履歴は止まる。
「W杯で笛を吹くためには、SRの準決勝を任せてもらえるくらいの力がいります」
国同士の「戦争」とも表現される一戦を裁くには、遺恨が残らないよう異次元のレベルが要求される。イングランドやフランスなど欧州6か国のレフリーも集まって来る。
久保には悔いの残る試合がある。
レフリーとして、退場を示すカード、レッド(赤)を10分間の一時退出であるイエロー(黄)に弱めてしまった。
昨年3月16日、チーフス×ブルズ戦。
後半32分、チーフス、そしてオールブラックスの司令塔、ダミアン・マッケンジーが頭部に腕を伸ばしたタックルを受ける。
久保はとっさに赤の提示を考えた。
「開幕前のミーティングで、頭へのタックルは厳しくとる、という申し合わせでした」
ただ、そこに複雑な状況が絡む。
マッケンジーが微妙にかがんだため、相手の手は頭に当たった後、上に滑る感じになる。大きなダメージには至らなかった。
AR、ビデオで判定をするテレビ・マッチ・オフィシャル(TMO)とインカムで話す中、赤はきついのではないか、と思いだす。
試合の残り時間は8分。どちらを示しても復帰はできない。
それらを総合的に考えて、色を黄に変えた。
当然、選手にとっては赤ならその衝撃、そして課せられる処分も違ってくる。
試合後、色を変えたことを指摘された。
結果、落伍する。
開幕前、SRで2試合ずつこなし、悪かった者3人を落とす取り決めがなされていた。以後、試合を任されなくなる。今年、欧州6か国対抗のARは2試合担当したが、SRに呼び戻されることはなかった。
「結局、変えちゃあいかん、ということです。その方が後悔も少ない。ARやTMOから違うニュアンスが来たとしても、彼らにこちらの判断を理解させるようにもって行き、その上で言い切らなければなりませんでした」
晴れ舞台の前年、悔しい思いをした。
しかし、久保がこの国で一番優秀なレフリーであることに変わりはない。