【ラグリパWest】「本当にいい男」(下) 藤田雄一郎/東福岡高校監督
楕円球との共通点を口にする。
「みんなが協力するところです。26人で交代しながら舁き山をかつぐのですが、ひとりでも気を抜くと前に進みません」
スタイルは締め込みをして、さらしのような腹巻を巻く。ヒザから下は脚絆(きゃはん)と地下足袋。おしりからくるぶしまでのラインがはっきりと出る。「永遠の90キロ」はここでも効力を発揮する。
生まれ、育った場所の文化を大切にして、次の世代につなげていく。それはラグビーにおいても変わらない。
20回目を迎える選抜大会は13年連続16回目の出場になる。優勝回数は大会最多の5。今回もV候補の最右翼である。
8つある予選グループはBに入った。札幌山の手、徳島・城東、慶應義塾の3校とリーグ戦を戦う。1位になれば準々決勝に進む。
東福岡の特徴である個々の能力の高さは例年以上だ。昨年の17歳以下日本代表にはメンバー最多の5人が選ばれた。
6人のリーダーのうち4人。廣瀬、小西(直前に負傷離脱)、川崎、高本、そしてナンバーエイトの西濱悠太だ。
5人ともに年末年始の花園大会で試合をこなしており、経験値は高い。
昨年度は桐蔭学園に苦渋を飲まされた。
19回選抜大会は8強戦で34-40、98回全国大会では4強戦で38-46と競り負けた。
この大会はその雪辱にもなってくる。
新チームになってから、守備面の強化に力を入れた。看板のワイドラインからの切り込みによる攻撃以上に時間をかける。
「ウチと桐蔭学園の差は何か。それはタックルの力だと思います。獲られたら、獲ればいい、ではありません」
1月6日、大阪・花園から帰福して以来、基礎的な練習に入った。
「小学校や中学校でやっているような、一対一のタックルからもう一度やり直しました」
福岡県予選、九州大会を含めた公式戦7試合で失点はわずか3。決勝戦の佐賀工に許したペナルティーゴール1本のみだった。
ディフェンスがより強固になった東福岡は、3月28日、大会開催日前日に決戦の地、埼玉・熊谷に入る。
チーム、そして藤田の頂点を目指した春の戦いが幕を開ける。