「除外」サンウルブズに突きつけられた法外要求。ただ、残留へ積極的に動かず。
2016年からの18チーム拡張体制への参加チームが正式に決まったのが2014年の秋だったから、この時期に、次のフォーマットが決まるのは分かっていたはずだ。
しかし、サンウルブズがリーグへの残留を実現させるための交渉を積極的にやってきたわけではない。
また、今回突きつけられた条件に関しても受け入れを拒否しただけだ。資金繰りに動いたわけでもなく、SANZAAR側との残留交渉も積極的にはおこなっていない。
放映権の未分配に関しては、そもそも、前回の契約時と変わりない契約内容だ。
SANZAARとは、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンのジョイントベンチャー。日本は出資金を払っていないのだから、放映権料を受け取る権利はない。それを受け入れての前回契約だった。
会見で、「出資してでも(リーグ残留の)継続意思はなかったのか」の問いに、「(先方から)そういう働きかけもなかった」と坂本専務理事は答えた。
それは、ある意味当然だろう。SANZAARは出資したいと言えば誰でも喜んで受け入れるわけではない。日本を正式にビジネスパートナーとして受け入れるには、サンウルブズが近い将来、上位に進出すると現時点で感じさせないといけなかったが、それはできなかった。
またサンウルブズは、この3年間のうちに、経済面でもSANZAARが思っていたようなものをもたらせなかったのだろう。
2016年にチーム拡張に踏み切ったのは、新規チーム加入による変化を期待したからだ。SANZAARは増えたコストについて、新しいスポンサーシップやテレビ収入で増えたコストを回収することを考えたが、期待外れだった。
それがサンウルブズの力不足のせいかと言えばそうではないが、このままでは変化は見られないと判断された。
今回の判断においては、南アフリカが強くサンウルブズ除外を主張したと言われる。
その背景には、2023年のワールドカップ開催地決定投票の際、日本ラグビー協会が南アフリカでなく、フランスに投票したことも無関係ではないとされる。
しかし、実際に南アフリカ勢の移動に関する時間と金額の負担は大きかった。
スーパーラグビーでは遠征費用に関し、アウェー戦を戦うための渡航費はSANZAAR持ち。各チームは、ホームゲーム開催時の運営費を自分たちで払うシステムだ。スタジアムの使用料、施設設営やスタッフの賃金など、試合開催に必要な経費。これに、ホームゲームに向けての自チームの活動費用(合宿など)、選手たちのサラリーを加えたものがチームの運営費だ。
この点においても、サンウルブズはSANZAARに属していないから、支出は自分たちに関するものだけでよかった。
他にはリーグ全体の諸経費もかかっているのだから、そこにも不満を抱えていたのかもしれない。
サンウルブズのスーパーラグビー加入は、ある意味、試された期間だった。
どれだけのものを自分たちにもたらしてくれるのか、と。
その結果、「まだいてもいいよ」の条件が、10億円とも言われる経済的要求だった。
サンウルブズ側は日本代表の強化に関して、これからもスーパーラグビーで戦うことがベストであり、新たに生まれたファン層を絶対に逃したくないなら、金額交渉でも、この先の発展プラン提示でも、もっと積極的にすべきだった。
この結末では、今秋のワールドカップまでの強化に活用しただけになってしまった。