「これが最後の就活と思って」。専大5年目の坂本洋道、トップリーグ入り目指し春からHO転向。
ウェイトトレーニングが趣味の坂本洋道は、スクワットの数値では240キロをマーク。2018年秋の時点では、所属する専大ラグビー部でトップの記録だった。
チームが3年ぶりに関東大学リーグ戦1部で挑んだ昨季、坂本は3年生のFLとして肉弾戦で活躍した。球を持つ相手をつかみ上げたり、人垣を突き破ったり。
試合を重ねるうちに、憧れていた国内最高峰トップリーグのクラブの関係者から名刺を受け取った。念願のスカウトか。否。公称で身長173センチ、体重97キロの戦士は言う。
「監督経由で『残念ながら』と返事が返ってきて…」
目標達成のため、必死にあがく。採用を見合わせたクラブの本音をくみ取ってか、ポジションチェンジを決断。運動量と大きな骨格が求められる元の職場から、サイズ以上に緻密さの問われるHOへ移った。
「もともと『FLで行きたいです』と言っていたのですが、トップリーグのFLでは外国人が多く、日本人では限られた選手しか入れない。『サイズがサイズで』『FLならもっと運動量が…』という理由で断られることが多かったので。今年は、HOをやります」
スクラムでは最前列の中央に入り、空中戦のラインアウトでは投入役を務める。そんなHOの基本動作をマスターしたうえでFL時代のプレーを披露できれば、確かにチャンスを広げられるかもしれない。元気な坂本は続けた。
「スクラムではセットから組むまでの間にやることがたくさんあって。1番と3番(左右のPR)を引き連れながら組んで、なおかつ相手との首の取り合いにも勝たなきゃいけない。試行錯誤しながらやっています。HOの1年生という感じで、下級生に教わりながらやっていますね」
3月11日、神奈川・日体大健志台キャンパス内ラグビー場。国内最高峰のトップリーグが開く「トップリーガー発掘プロジェクト2019」に参加した。進路の決まっていない学生や再挑戦を目指す社会人が約110名、集まるなか、坂本は午後の試合形式テストで本来のFLに入った。チョークタックル、ロータックル、ジャッカル、突進と得意なプレーを披露する。
「きょう見てもらう(過去に接触のあった)トップリーグのセレクターの方にも、(春から)HOでやりますということは伝えてあります。きょうは6番(FL)で出ますけど、トップリーグに入ったらHOをやりますと。いまは練習でもスクラムを組んだり、スローイングをしたりしているので」
東京の昭島ラグビースクールで楕円球に出会った。國學院栃木高時代は一時目指していた法大入学を断念も、村田亙監督の誘いを受け専大入り。高校時代に師事した浅野良太コーチ、大学で出会った大東毅ヘッドコーチは、自身がトップリーグに憧れを抱いた時期のNECで主力選手だったという。
昨秋に受けた専門誌での取材では、「毎回、就活だと思って、命賭けてやってます!」とトップリーグ入りへの思いを明かしていた。改めて、決意を明かす。
「去年も就活なのでという形で話しましたが、これが最後の就活。死に物狂いでやります。筋トレは、毎日欠かさず続けています。体重は(昨年の)シーズン中に1~2キロ落ちてしまったのですが、オフの間に戻して、戻して、97キロ。この時期はウェイトをやり込める時期なので」
入部したのは2015年だから、次の4月からは新4年生として5年目のシーズンを迎える。神奈川・伊勢原市内の寮を出て、ともに5季目へ突入する松浦祐太前副将とともに、アパートで共同生活を送る。勝負の1年を楽しむ。