【ラグリパWest】お酒の話。
大八木はんが飲む理由は?
「そら、うまいもん。勝っても、負けても、汗を流したあとの一杯は格別や」
試合でのどをカラカラにさせておく。そこにすーっと黄色の液体がしみ込んで行く。
「男たちが、プライドをかけて戦ったあとやろ? まずは試合を回想する。そうしたら、心地よい疲れがどっとくる。その後は現実の世界に戻らんといかん。その前のちょうどええ緩衝地帯になるんや」
なるほど、サラリーマンなんかも一緒やね。
仕事を終えて、家庭に帰る。そこの切り替えのところにお酒はある。
せやけど、一杯だけやなくて、みんなずーっと飲み続けてますやん。
「あとは惰性や」
ラグビーには「バッファロー」っちゅう罰則がある。右手でグラスを持ったらあかんねん。イッキの対象や。
新しい知り合いと握手をするため、右手は濡らさない、という説もある。
「気を抜かんと集中して飲め、ってことやろ」
大八木はんは、にんまりした。
ワイは名言を知っている。
「人の心にはウソがある。酒の心にはウソがない」
酔うとふわーって、いい気持ちになるやん。なんか、たまっていたことを口にしてしまうやん。それが本心や、ということや。
だから、酒席は大事なんや。みんなの本音が出る。距離がぐっと縮まる。
中島茂はんや。教えてくれはったのは。
近畿大のラグビー部総監督。仕事は5000人からなる一大教育グループの理事をしてはる。10人ほどのトップのひとりやな。
この言葉を胸に刻んで、生きてきて、今があるんやで。
ワイのおやじは酒飲みやった。
多少、酒乱の気があってな。酔うと怒鳴ったりしてた。それが反面教師になって、昔はほとんどアルコールを摂らんかった。
佐光義昭先生に言われたことがある。
「おまえはどうして一升瓶をドンと置いて、『おやじ、今日はやろう』と言えないんだ?」
普段は意見がましいことを口にしなかった恩師の言葉は、耳に残っている。
おやじは定年退職したあと、酒でとり乱すことはなくなった。これまでの人生や仕事のストレスやったんやろなあ。
今は、人間は飲まなやってられへんことがある、というのが少しはわかるようになった。
おやじは先年他界した。結局、親子で酒を酌み交わすことは一度もなかった。
若い人ら、後悔せんようにな。
あっ、せやけどハタチを過ぎんと飲酒はダメよダメダメよ。
<未成年でも大学生なら大人に扱われ、どんな店でも飲ませてくれた>
藤島大はんが『北風 小説 早稲田大学ラグビー部』の中に書いているのは、さかのぼること40年前くらいの話やからね。
強制はあきません。暴れたり、暴言を吐くのももってのほか。適量を守って楽しくやりまひょ。お酒は人生の潤滑油やさかい。