【ラグリパWest】東大阪KINDAIクラブのこれから。
神本の見識は広い。
関西ラグビー協会で大学運営をするリーグ委員会において、所属するAリーグをとりまとめる主担者を任されている。
現役時代は神戸製鋼で主にセンターとして6シーズンプレーした。
他チームや協会関係者と触れ合う中で、大学を軸にしたクラブ化の構想を持つ。
「ワセダクラブがヒントになっていますね」
早稲田大はラグビー部が中心となり、クラブ化が進められ、NPO(特定非営利活動法人)の資格も得た。ラグビースクールはもとより、柔道など20以上のクラブがある。
ワセダクラブとの違いは行政との積極的な関係性だ。学校所在地であり、「ラグビーのまち」をうたう東大阪市とタイアップする。
神本は市長の野田義和に構想を話し、市章の使用許可をもらった。そして、スクールカラーの藍色でエンブレムを作る。
鳩と市の頭文字「ひ」が合わさった市章の左上の羽根部分に梅花の学園章、下にはクラブの頭文字をとった「H.O.K.C」が白で入る。
市の存在はさまざまなアイデアを現実化する上において心強い。
神本に質問をぶつける。
労力がつまった小、中学部門でプレーをしながら、他の高校や大学を選ぶ子供が出てきたら?
「そこのコントロールはできません。ただ、ラグビーは一族スポーツなので、まず接点を持つことがプラスになります」
この競技の特徴は家族や親戚ぐるみ。クラブの存在とよさを知ってもらえればいい。
そこに小さな縄張り意識はない。
ラグビーで手ごたえをつかめば、さらにその先を神本は見据える。
「ぼく個人の勝手な考えですが、その流れを体育会全体に広げられないか。子供たちが、色々なクラブに体験入部して、自分に合うスポーツを自分自身で見つける。そういうことができたらいいな、と思います」
3児の父らしい発言だ。必ずしもラグビーへの固執はない。
近畿大は水泳、アーチェリー、スキーなどはオリンピック、野球や相撲などはプロに多くの人材を輩出している。そのクラブが横のつながりをより強固にし、外界との接点をこれまで以上に増やせば、この教育機関の魅力はさらに上がる。
ただ、神本はこの先の道のりが平坦でないことも知っている。
「財政的なことを含めて、色々な壁があると思います」
まずは周知を徹底させる。その上で大学から本格的な認可を得る。そして、NPO法人化を視野に入れる。
やることは山積みだ。
しかし、やり甲斐はある。
ラグビーを通して、スポーツ、学園、地域、行政を一体化することができれば、関西、いや日本初。そのダイナミックさは普通の人生では、まず味わえない。
(文:鎮 勝也)