帝京大戦勝利の立役者、天理大ファウルア・マキシの日本語は抜群。
冬だというのに、ハーフパンツとビーチサンダルを履いていた。寒くないのだろうか。「寒いっす」。いつもは長いパンツとスニーカーを身に付けているが、多くの報道陣が集まっていたこの日は「たまたま」夏場のようなスタイルで練習場へ訪れていた。
2018年12月29日、奈良・天理大白川グラウンド。天理大ラグビー部4年のファウルア・マキシがトレーニング後、両手を前にそろえて記者の問いかけに応じる。折しも、東京・秩父宮ラグビー場での大学選手権準決勝を翌年1月2日に控えていた。9連覇中の帝京大に、真っ向勝負を仕掛けると言った。
「倒しに行く。相手のフィジカルが強いのはわかっているけど、僕らもフィジカルで勝負する。(相手の)得意なプレーをさせたくないです。アタックをやらせたくない。そのために、ブレイクダウン(接点)でもターンオーバーを狙う」
身長187センチ、体重112キロのNO8。7歳の頃に母国トンガでラグビーを始め、15歳で来日した。日本航空高校石川時代は高校日本代表に選ばれ、天理大では20歳以下日本代表入り、日本代表デビューを果たした。今季はサンウルブズ(スーパーラグビーの日本チーム)のトレーニングスコッドにも加わるなど、将来を嘱望される。
島根一磨主将いわく、「賢いです」。約4年間も同じチームで過ごした仲間は、マキシの戦術理解度の高さに感心する。
その「賢い」さまは、普段の言動からもにじむ。日本にやって来る留学生選手にあってとりわけ日本語がうまく、味方のプレーを見つめながらの「サポート、ちゃんと入ろう!」や自身がミスした直後の「くっそー!」など、平時にこぼれる叱咤や独り言さえもネイティブのイントネーションで放たれる。本人は自らの日本語力を「高校の時から寮生活をして、たくさん教えてもらった」とするが、それだけでは説明がつかないような。
似たような暮らしをしてきた海外出身者よりも上手に話せるのは、いったいなぜなのだろう。そう問われると、内なるチャレンジ精神を明かした。
「練習の時から、良くしゃべるようにした。(覚えた言葉を)使ってみる。それが間違ってる言葉だったら、(味方に)直してもらえる」
準決勝は結局、29-7で制した。守っては地面の球にしつこく絡み、「ブレイクダウンで頑張れば流れを変えられると思って、相手のサポートプレーヤーが遅く感じたらジャッカルを狙っていきました」。攻めては後半18分にチーム4本目のトライをマーク。12日の決勝戦に駒を進めることとなった。
「最高。帝京大相手に勝って、幸せです。嬉しかったです」
秩父宮でのファイナルでは、昨季準優勝の明大と激突。強力FWを擁する古豪へも持ち前のパワーをぶつけたい。
「いい準備をして、天理大らしく戦いたいです。いつも通り、いつも通り」
几帳面なようで、遠征に出かける際は衣類をすべて均等なサイズに折りたたむ。「きれい好き。あまり部屋が汚いのも嫌」。今季最後の旅支度も、楽しみでならないだろう。