【ラグリパWest】土井家の女子として。 土井環奈(東海大静岡翔洋/SH)
小4から交野(かたの)ラグビースクールで本格的に競技を始める。
テレビで食い入るように見たのは「マイケル・リーチ」。本物を目の当たりにしているため、当時から趣味はしぶかった。
仰星の中高でもラグビーを続けた。
しかし、高1で転校を決意する。
仰星は伝統として、中高も男女も関係なくともに練習をする。かんなは、よかれと思ったことは口にした。
ただ、100人近い部員の中、女子はたったひとりだった。
正論に対して、口で負かせない男子たちは、体の大きさや数の論理で来る。
「男の子が集団でくると圧がかかります。言いたいことが言えません。認めてもらえず、苦しかったです」
大好きな父が作ったチームへの思い入れ、そのよき文化を守ろうとする意志は、同じ境涯にある者でないと分からない。
その時、翔洋に女子だけのチームがあることを知る。兄弟校のため、転校の手続きは煩雑ではなかった。女子寮もあった。
昨年4月、静岡に旅立つ。そこには気兼ねなく話ができる同性の仲間たちがいた。
「来てよかったです。楽しいです」
自己管理はできていた。
お弁当はふたの裏についた米粒もキレイにとって口に運ぶ。揚げものは控える。寮生活に何の問題もなかった。
花園でのかんなの勇姿に拍手を送ったのは父母だけではない。中高でのコーチをした能坂尚生も同じだった。
「メールで『出ます、頑張ります』と連絡をくれました」
仰星は優勝旗の返還に来ていた。
戦後6校目の連覇を狙ったが、地区決勝で常翔学園に7-54で敗れていた。
この春、日本体育大に進む。
女子ラグビーの強豪は、2018年の4大大会(太陽生命ウイメンズセブンズ)では半分の2大会を制した。2年ぶりの年間総合優勝も達成している。
神奈川では父とふたりで暮らす。
「ごはんを作ったりしないといけないけれど、それは苦になりません」
得意な料理はジャーマンポテト。じゃがいも、ベーコン、たまねぎなどを炒め、塩コショウで味を整える。ラグビー女子にはもってこいの大皿料理だ。
大学生活に期待感をにじませる。
「常識をわきまえた立派な人間になりつつ、レギュラーを獲ったり、代表になりたい気持ちがあります」
かんなは家では唯一の現役選手だ。
姉・瑞季(みずき)はマネジャー。仰星3年時には95回大会の優勝を裏方として支えた。現在は同志社女子大の3年だ。
弟・瑶太は仰星中1年。ゴルフ部にいる。
5人の家族の代表として、健志台ではさらに高みへはばたきたい。同時にそれは土井家にとっても大きなよろこびや励みになる。
(文:鎮 勝也)