コラム 2018.12.20
【野村周平コラム】最初の、ちりになる

【野村周平コラム】最初の、ちりになる

【キーワード】

 佐野高ラグビー部にしても、動き出したばかりで具体的な行動の策定はこれからという。栃木県内で行われるトップリーグの試合会場で今まで以上に美化活動に取り組めるのではないか。地元名物の佐野ラーメンとコラボして地産地消を進められないか。ペットボトルのゴミを出さないよう、部独自のスクイズボトルを作れないか。来年のW杯では、地球温暖化の影響を受けているフィジーの選手や関係者から話を聞き、ラグビーを通して海洋環境の変化を学ぶことはできないか。構想はどんどんわいてきているという。
 ラグビーとSDGsを最初に結びつけ、具体的な形にしたのは今年8月にオープンした岩手県の釜石鵜住居復興スタジアムだった。防災や世界との交流など六つの柱を掲げ、「小さなスタジアムの大きなとりくみ」という標語のもと、幅広い活動に横串を刺して、復興の象徴となるスタジアムの船出に、もう一つの社会的な意義を加えた。とかく閉鎖した議論に陥ってしまうことが多い日本ラグビー界では異例の、開いた世界に視点をおいた取り組みだった。
 部員不足に悩むラグビー部は全国に少なくないだろう。どうすれば、地域に支持されるスタジアム運営ができるかを考える自治体やスポーツ団体も少なくないはずだ。SDGsは決してすべての問題を解決する万能薬ではない。それでも間違いなく、ラグビーやスポーツと社会をつなぐ材料になりうる。
 佐野高や釜石だから、ではない。佐野高や釜石だって、できるんだ。彼ら彼女らの取り組みは、ラグビー界全体の取り組みへと変えられるかもしれない。ちりも積もれば山となる。ラグビーの美徳の一つは、団結である。

「すごいところに来た…」栃木県立佐野高校ラグビー部の石井勝尉監督、渡来主将


PICK UP