ラグリパコラム 2018.11.09

大本命の抜けた近畿大会優勝を狙う。 大阪市立相生中学校

大本命の抜けた近畿大会優勝を狙う。 大阪市立相生中学校
相生中の3年生部員と顧問団。後列右端が監督の鈴木毅人先生、その左が安井利次先生。
後列左端が小澤俊介先生、その右が赤木基浩先生。前列中央が井上大勝主将。
うしろのネットには白いテープで作ったラグビーポールが見える

s1

大阪市立相生(あいおい)中学校の正門前にかかる近畿大会出場を祝う垂れ幕
 読みを「あいおい」とする相生中学校は、兵庫県にはない。大阪市にある。
 白壁と薄緑の甍(いらか)を持つ浪速の美しいシンボル・大阪城の東にある。
 所在地は東成区。金属、木材、紙などを扱う町工場が混在する下町だが、太閤秀吉以前からの歴史があり、落ち着きを保っている。
 この市立中学校ではラグビーが盛んだ。部員数は40(3年から15、8、14、女子マネジャー3)。今、近畿王者を狙う。
 近畿中学校総合体育大会。略して近畿大会。軟式野球など22の種目と競技で、この地方ナンバーワンの選手やチームを決める。
 ラグビー競技は11月4日に開幕した。
 67回目となる大会で、2回目出場の相生は初戦の西陵(京都)を24−22で降した。
 準決勝に進出する。
 主将の井上大勝(たいしょう)は話す。
「アイオイって名前はあんまり知られていないと思うので、チャレンジャーとして試合に臨んで、優勝したいです」
 180センチ、85キロの大型FB。高校生と見まがうサイズで強さと速さを兼ね備える。チーム唯一の大阪府選抜だ。相生は井上を軸にフォワードとバックス一体で攻め、守る。
 監督は体育教員でもある鈴木毅人(たけと)だ。不惑を迎えた元SHは赴任6年目。選手たちを楽しくさせることに心を砕く。
「ウチは経験者が集まっているチームではありません。素人が多いんです」
 タッチフットは30分近く続ける。
「彼らが好きなんで、結構やります」
 試合形式の練習前には首のトレーニングを必ず入れる。安全対策も抜かりはない。
 鈴木は東海大仰星(現東海大大阪仰星)から東海大に進んだ。
「生徒一番で物事を考えられます」
 仰星を全国屈指の強豪にした土井崇司が、その能力に折り紙をつける教え子である。
 相生の顧問団は4人。鈴木は表情を崩す。
「めぐまれていますね」
 2歳下には赤木基浩がいる。
 元WTBは発達障害や肢体不自由な生徒を受け持つ特別支援学級にいる。
 大阪工大高(現常翔学園)の3年時、78回全国大会(1998年度)で準優勝した。史上初となった大阪決戦は、啓光学園(現常翔啓光)に12−15で競り負ける。
 その後、大阪体育大に進学。セコムでの社会人や朝日大でのコーチの経験を持つ。
「コーチングは監督の言うことに合わせます。監督は1人ですから」
 ギョーセーやコーダイといった昔の小さなライバル意識はない。
 今年4月には小澤俊介が加わった。
 鈴木の4歳下で、高大の後輩になる。元フロントローは鈴木、赤木同様に体育の教員免許を持つが、ここでは技術を教えている。
 小澤の代は仰星を初優勝に導いた。2年時の79回全国大会決勝(1999年度)では、埼工大深谷(現正智深谷)を31−7で下した。
 最年長は、定年後に再任用された安井利次。社会科教員である。人生経験を多く積み、的確な助言を送る。
 この鈴木、赤木、小澤、安井のカルテットでチームへの責任を果たしている。
 ただ、指導陣は充実するものの都会の公立校ということもあり、練習環境は厳しい。
 土のグラウンドにあるトラックは150メートル。鈴木は解説する。
「斜めでなんとか200メートルとれます」
 そのグラウンドを野球部と半々で使う。周囲を陸上部が走る。防球ネットはない。軟球とはいえ、当たると痛い。バッティング練習の時は場所を譲る。
 鈴木は笑う。
「まだ、サッカー部がないだけいいです」
 仮設式のポールすらない。北側校舎の防護ネットにHにつけられている白テープを、プレースキックでは目標にする。
「練習試合はできないので、自転車で近隣の学校に行かせてもらっています」
 平日の練習は午後4時から2時間。6時30分には完全下校する。照明はライト4基のみ。
「僕が来た時にはこれもありませんでした」
 赤木は相生に来て5年目になる。
 その状況下で、鈴木はミーティングによる部内結束を図る。
「今年は最低でも週に1回はやります。去年までは大きな試合の前日くらいでした」
 主にオフの月曜に2時間程度。紙に自分自身やチームの強み、そして課題や方向性などを書かせ、話し合う。不満もすくい取る。
「チームにまとまりが出てきました」
 主将の井上は効果を口にする。
 東成区内には中学が4つあるが、学区制がなくなり、選択制になった。鈴木らの指導の良さも伝わり、部員は徐々に増えている。
 正門前にはPTAが作ってくれた「祝 近畿大会出場 ラグビー部」の垂れ幕が下がる。周囲の期待も大きい。
 相生の創立は1955年(昭和30)。今年はできて64年目になる。ラグビー部の創部は17年後の1972年。歴史は長い。
 大阪市内の中学は年間4大会をこなす。新人戦、春秋の市内大会、近畿大会予選だ。
 勝ち抜けば6つになる。
 春の市内大会で8強入りすれば府大会へ。そこで優勝して、府の選抜チームが予選に勝てば、9月の全国大会に出場できる。
 近畿大会は3年生にとって最後のビッグ・タイトルになる。勝ち残れば市内大会と重なるが、鈴木は週末が連戦になるのもいとわない。どちらも一軍のAチームで臨む。
「ケガをしたら、した時のことです」
 2つの公式戦ともに尊重している。
 近畿大会では優勝の可能性が広がる。
 絶対優位だった仰星が初戦で藤森(京都)に15−47で敗れる。9月の全国大会では1試合平均57点の得点力で大会連覇をしていたが、海外への修学旅行と重なり、主力の3年生が出場できなかった。この学校行事は今年6月の大阪府北部地震で延期になっていた。
 相生が春の府大会決勝で仰星に対戦した時は7−73で大敗した。
「むちゃくちゃ強い。話になりません」
 鈴木が話すチームは消える。
 準決勝の相手は河合第二(奈良)。試合は11月10日(土)14時に開始される。場所は花園ラグビー場の第2グラウンドである。
 運も実力のうち。あと2つ勝てば、近畿の頂点に初めて立てる。
(文:鎮 勝也)

PICK UP