コラム 2018.09.14

マスト(Must)は1年でのAリーグ復帰。摂南大学

マスト(Must)は1年でのAリーグ復帰。摂南大学
関西学院大との練習試合で2トライを挙げた1年生SOのヴィリアミ・ツイドラキ。
父はトヨタ自動車、日本代表で活躍したパティリアイさん(撮影:石田有知)

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突破を図る摂南大PRの原名健(撮影:石田有知)
 摂南大にとってのマストは「復帰」だ。
 主将の岡田翔(東海大仰星?)は話す。
「色々な人から1年で上がらないと当分は無理、と聞いています。後輩たちにつなげるためにも、圧倒的な力で上がりたいです」
 昨年、二部相当の関西Bリーグに降格した。12月10日、入替戦で大阪体育大に17−28。最上のAリーグでは8戦全敗だった。
 ボールを動かすラグビーに固執したあまり、キックを使った地域獲得が疎かになった。
 今年、摂南大には追い風が吹く。
 留学生の同時プレー人数が3人になった。突破箇所が1つ増える。
 9月9日、関西学院大に勝利する。
 前年Aの4位チームとの練習試合を33−31(前半19−14)で制した。
 先発には3人の留学生がいた。
 PR郭玟慶(かく・ぶんけい=長榮高級?)=台湾。
 NO8マタエナ・イエレミア(ケルストンボーイズ?)=ニュージーランド。
 SOヴィリアミ・ツイドラキ(ラトゥナヴラ?)=フィジー。
 ツイドラキは前半4分、鋭いカットインから約40メートルを独走。WTB丸田誠一(星林?)の先制トライをアシストする。自身は前半33分、後半14分と2トライを記録。2本目は鮮やかなパスダミーを披露した。
 ゴールキッカーもこなす新人は、ラグビーに優れた血を引く。亡き父・パティリアイは快足WTB。トヨタ自動車に所属し、日本代表キャップ19を得た。1999年のワールドカップにも参加。兄・バティリアイもトヨタ自動車のCTBである。
 フィジアンながら、日本語での意思疎通が必要なSOができる。父と5歳までこの国で暮らした。コーチの内部昭彦は笑う。
「初めて会った時、彼の後ろにお菓子が置いてありました。『食べる?』って聞いたら、『結構です』と。これなら大丈夫と思いました」
 郭は181センチ、120キロのサイズ。1年からレギュラーだった左PR原名健(伏見工?)とスクラムの軸になる。2年の段階ですでにトップリーグチームが注目している。
 タンギパ・タリフォロフォラ(ケルストンボーイズ?)がピッチに立ったのは後半だった。2年連続で関西学生代表に選ばれたLOを温存できる層の厚さがある。
 関西学院大戦は、昨年、レギュラーだった4人の4年生がケガなどで欠場した。
 ランニングに優れたFB岡田をはじめ、HO加賀領一(天理)、FL?泰樹(のぼる・たいき=常翔啓光)、CTB山口諒二(都島工)。
 その中での勝利だった。
 今年のコーチングの中心は38歳の2年目、天満太進だ。
「春から徹底してきたのは、フィジカルの部分を鍛えることです」
 日本IBMと近鉄で14年間、LOやFLとしてプレーした。ボール争奪において、肉体を鍛え上げる大切さを知る。
 新チームになって、学校休暇中は1日かけてチームに4部練を課した。
 7時30分から1時間(ラグビー)
 10時30分から1時間(ウエイト)
 13時から1時間(ウエイト)
 16時から1時間(ユニット)
 集中力をつけるため、1回のトレーニング時間は短めに設定する。合間にはラグビー界でもトップのボリュームと栄養を誇る「摂南飯」を3食摂らせた。
 5月には東京・府中にサントリーを訪れる。2泊3日でトップリーグ連覇を達成した沢木敬介監督に教えを乞う。
「集中力のコントロールなどを学びました」
 仲介したのは、両チームのOBになる浅田朗。41歳の元CTBは大阪のサントリー酒類で働く。その経験や人脈で、母校へのアドバイザー的役割を果たしている。
 その天満を補佐するコーチとして、中村洋平が加わる。元SHは國學院久我山、立教大を経て、サニックスとリコーで5年プレーした。今年28歳と若く、選手と同じトレーニングができることも強みだ。
「リハビリメンバーの指導もしますよ、と言ってよく動いてくれます」
 天満からは感謝がもれる。
 摂南大の創部は1976年(昭和51)。その10年後、NO8として日本代表キャップ10を持った河瀬泰治が赴任する。
 Aリーグでは2009年の3位が最高だ。当時の主将は樫本敦。走力のあるHOは今年の近鉄の主将でもある。大学選手権には2度出場。2008年度には8強に入った。
 今春、Aリーグとの対戦は大阪体育大に56−10で大勝。昨年3位の立命館大には35−40で競り負ける。
 夏合宿は長野・菅平で、8月13日〜28日まで約半月を過ごした。コンタクトの強さでならす韓国の2大学、高麗と延世には59−5と76−22とそれぞれ圧勝した。
 それに続く関西学院大からの勝利。自他ともに期待はふくらむ。しかし、チーム最高責任者である総監督の河瀬に慢心はない。
「勝てるつもり、強いつもり、というのが一番怖い。まだ、試合もやっていないのに、そんなことは分からん。学生なんやから、強い弱いなんて、その時の状況ですぐ変わる」
 Bリーグの開幕日は9月16日(日)。摂南大の初戦は大阪教育大だ。キックオフは正午。場所はホーム、摂南大グラウンドである。
 相手の力に関係なく、入替戦のある12月につながる試合を積み重ねていきたい。
(文:鎮 勝也)

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